(産業天気図・保険業)運用損益は緩やかに改善傾向だが、本業引受利益は依然苦戦続く懸念大

2005年3月期も保険業界は資産運用損益は改善ずる一方、トップラインの保険引受の苦戦が続きそうだ。
 損保業界は2004年3月期は主力の自動車保険が2年連続のマイナス成長に陥った。火災保険の銀行窓販好調や輸出荷動きの好転による海運保険の改善など保険種目的には健闘しているものもあるが、主力の自動車保険の不振をなかなかカバーできていない。少子高齢化や買い換えサイクル長期化に伴う新車販売の伸び悩みに加え、リテール市場での単価競争も続くため、自動車保険は3年連続のマイナス成長の可能性も高まっている。2005年3月期も損保会社の正味収入保険料は依然厳しい状況が予想される。事業費の緩やかな改善はあっても、自然災害が平年並みになる(2004年3月期は通常より少なかった)と仮定すれば損害率の改善も一巡するため、保険引受収益の本格回復も期待薄だ。
 一方で損益面では2004年3月期は大幅な改善があった。持ち合い株の売却に伴う株式売却益が株価上昇を背景に大幅拡大している。減損処理額も2003年3月期に比べ急減した。2005年3月期は株売却益は縮小に向かうが、現状の株価水準が続く前提でみれば持ち合い株の売却継続方針と相まって高水準の資産運用収益は維持できそうだ。
 個別では東京海上火災と日動火災海上が今年10月に合併するが、合併に伴う拠点統廃合効果が出る前に、当面は合併に伴う費用増が先行する可能性が高く、事業費率改善は一服しそうだ。トップラインでも2004年3月期にマイナスとなった自動車保険の売上げをプラスに反転できるかが注目されるが、大幅増は期待薄だろう。
 損保ジャパンや三井住友海上火災の二位争いもさらにヒートアップしそうだが、果たして正味収入保険料でプラスの争いに持ち込めるかとなるとこれまた心許ない。損保ジャパンの場合は日産自動車の保険集約に伴う上乗せ効果が、三井住友海上は三井ライフからの契約移転効果という2004年3月期にあった特殊増加要因が剥げ落ちるからだ。
 2004年3月期の自動車保険で唯一プラス成長を確保したニッセイ同和損保は日本生命との協業により続伸。ただ、その伸長幅は鈍化しそう。あいおい損保以下の準大手・中堅損保会社が自動車保険での不振傾向から脱却出来るかも注目点だが、明治安田生命の販売上乗せが期待できる日本興亜損保を除いては、これまた大手以上に期待材料が少ない。
 生保業界に目を移すと、新規契約高の2桁減が続く厳しい状況が続いている。主力の死亡保障性市場が、少子高齢化の進展と中心となってきた団塊世代の退出とともに構造的に縮小基調にある。ニーズの拡大するガン・医療・介護など第3分野保険や個人変額年金などは増加しているが、追い付かない。2004年3月期の業界全体の収入保険料が微増に転じたが、これは一時払いの個人変額年金の増加・寄与によるもので、大手生保には高水準の解約・失効とあわせ2005年3月期も我慢の状況が続く公算が大だ。
 株価上昇で株式の含み損益が大幅改善、ソルベンシー・マージンも上昇するなど財務内容面では大底を脱出した感が強い。損益面でも2004年3月期は株式減損や売却損が大幅に縮小、収益改善に大きくつながっている。金利も上昇しているが、資産側では高金利債券が満期を迎えるものもあって、配当利息収入は縮小傾向が続く。一方、負債サイドでは高予定利率契約も残ることから逆ざや負担もまだ中期的に高止まりするため、この面ではいぜん厳しい状況が続く。
 個別でみれば、日本生命以下のいわゆる日本系大手・中堅各社にとって、2005年3月期も新契約面では全般に苦戦が続く公算が大。そのなかで「保険組曲」の好調と保障性商品へのシフトが進み、収益、新契約で健闘する太陽生命の好調がどこまで続くのかが1つの注目点。2004年4月の持ち株会社傘下の大同生命との経営統合本格開始でT&Dグループがどう大手生保と差別化していくか。第2点は相互会社同士の合併を断行した明治安田生命が、今期もスタート当初の新契約の勢いを維持できるかも注目される。第3のポイントはAIGやアフラックなど外資好調組や東京海上日動あんしん生命など損保系生保上位組の躍進が続くのかどうかである。
【大西富士男記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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