米国企業の現金残高が1兆ドルに膨らんでいるが、事業拡大に向けられる可能性は低い《ムーディーズの業界分析》

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シニアVP−スティーブン・オーメン

米国経済の低迷にもかかわらず、米国企業の財務状況は良好である。
米国企業の現金保有高は1兆ドル近くに膨らんでいる。これは、コスト削減、設備投資の縮小、景気後退期のダウンサイジングなどが理由である。
現金保有高は年間の設備投資額と配当を合わせた額を上回り、債務残高の28%を占める。
米国経済の方向性がより明確になるまで、企業が現金を事業拡大や雇用に向けることはなさそうだ。現金は景気後退局面での緩衝材となる。
景気が安定化の兆しを見せるにつれて、自社株買いやM&Aに現金が活用される可能性が高い。
IT大手のシスコ、マイクロソフト、グーグルが現金保有残高のトップ3を占める。トップ20が企業のバランスシートの現金残高の37%を占める。
ムーディーズは、米国の最大手企業の2006年以降の現金保有残高の動向を探るため定量分析を行った。最もキャッシュリッチな企業を、全社および主要業種セクター内で特定している。現時点の現金保有高を、年間設備投資額プラス配当、ならびに債務残高と比較した。

概要
 米国企業のバランスシートは、政府や家計のバランスシートと比較して良好である。現金ならびに短期証券の保有高は、2008年末の7750億ドルに比して、10年半ばには9430億ドルに達した。米国の企業セクターは、これらの現金で年間設備投資や配当を賄ってもなお、1210億ドルが手元に残る。

手元現金ならびに短期証券
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