(産業天気図・電気機器−情報通信)半導体は活況続くが、重電やコンピュータなど他部門の足取りは鈍い

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2004年度の電気機器は、引き続き半導体が活況の半面、重電やコンピュータ、通信機器は回復の足取りが重そうだ。
 2003年度下期から盛り上がりを見せた半導体は続伸。デジタル家電の拡大等を牽引役に、2けた成長は業界のコンセンサス。新規設備投資意欲も強く、製造装置最大手の東京エレクトロンが2月、4月と相次いで前年度業績予想を増額修正するなど、受注状況は過熱の様相も。
 2003年度は均衡圏に止まると見られた日立製作所と三菱電機のシステムLSI合弁ルネサステクノロジは、設立初年度から黒字化を達成した模様だ。日立とNECの合弁で国内唯一のDRAM専業メーカー、エルピーダメモリも今1~3月期で黒字に転換したと見られる。ルネサス、エルピーダとも2004年度は出資元各社に利益貢献しよう。ただ、半導体は2005年下期~2006年にも調整局面を迎えると目されており、今年度は各社、中期展望に立った微妙な舵取りが求められる年ともなりそうだ。
 半導体と対照的なのが重電事業。かつては安定収益源との位置付けだったが、昨年度に続き、今年度も環境は厳しい。客先の電力会社や自治体の設備投資抑制、値引き要求が止まる気配が見られない。
 コンピュータは、企業のIT投資が回復傾向ながら、大幅増は「期待薄」(NEC幹部)。サーバー、パソコンなどのハードは数量増でも価格競争が続き、業界団体の電子情報技術産業協会(JEITA)の2004年予測は前年比1.5%減(関連装置を含む)。ソフト・サービス事業も競争激化で利幅が薄くなりつつあり、本格回復は望めそうにない。昨年度に富士通、NEC、日本ユニシスなどで生じたソフト・サービスの赤字案件再発を封じ込められるかも大きなテーマだ。
 通信機器はまだら模様。インフラ系は「薄日が差してきた」(富士通幹部)が、前期比横ばい程度か。一方、大型導入事例が散見され始めたIP電話は拡大期入りを狙う。顧客の慎重姿勢を切り崩す実績づくりがポイント。携帯電話は3G端末が本格普及期へ。国内は2Gからの乗り換えが主体と見られ、成長には海外、特に中国戦略が不可欠。無線関連は今年度、5%程度の成長が一つの目安。
 個別企業の2004年度の動向を見ると、日立は重電の低迷が継続。ただ、HDD事業が黒字転換するなど情報関連が回復。デジタル家電も貢献し、連結増収増益の見通し。
 東芝は残存者利益を享受できるアナログ半導体、ディスクリートに加え、特許を持つNAND型フラッシュメモリもデジカメやカメラ付携帯電話向けに拡大して全社を牽引、連結増収増益へ。ただ2003年度大赤字のノートパソコンは部門赤字継続の懸念残る。
 三菱電機は、日立と同様に比重が大きい重電では苦戦を強いられ、続落か。しかし主力のFA事業は半導体や液晶の製造装置活況を受けて伸長。総じて連結増収増益となろう。
 富士通は半導体で攻勢、サーバーも復調。ただIP電話や携帯電話には依然出遅れ感。得意のソフト・サービス事業で昨年度、不採算案件が発生したのが懸念材料。連結増収増益の見通しではあるが、証券アナリストらの間では「リストラが不十分」「ビジョンが見えない」などの厳しい認識が定着した。
 一方、富士通と同業態のNECでは、事業領域の選択と集中が比較的進展。通信は沖電気工業と並んでIP電話で先行、国内首位の携帯電話は中国展開などで一段の拡大図る。半導体子会社も順調で、連結増収増益が見込まれる。ただソフト・サービス事業では富士通と同じ懸念を抱える。
【内田忠信、風間直樹記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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