弥生は、なぜオリックス傘下に入るのか 岡本社長が語る800億円買収の背景

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岡本浩一郎(おかもと こういちろう)●1969年3月横浜生まれ。1991年東京大学工学部卒業、野村総合研究所入社。システムエンジニアとして主に証券系システムの開発およびマーケティングに従事。1997年カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営大学院修了。1998年ボストン コンサルティング グループに入社し、コンサルタントとして証券取引所のIT戦略構築、ハイテク企業のマーケティング戦略策定、ネット証券会社の事業立ち上げなどを支援。2000年IT戦略に特化した経営コンサルティング会社、リアルソリューションズを設立し、証券取引所や数多くの小売・サービス業向けのプロジェクトを推進する。2008年より現職。

――この間、上場といった選択肢はなかったのですか。

それはありました。今回のオリックスへの株式売却と、弥生の上場は、両にらみで進めていたものです。オリックスへの株式売却の話がまとまらなければ、上場という選択肢を用意していました。

――株式上場よりも、オリックスへの株式売却の方が、メリットがあるという判断が働いたということですか。

これは、どちらにもメリットがあると考えていました。しかし、売却側、買収側、そして、弥生および弥生のユーザーにとって、相対的に見て、どちらの選択がメリットがあるのか、ということでの結論だといえます。弥生の立場からみれば、どちらもありうるという姿勢でした。

私は運命論者ではないのですが、結果として、成立したほうが弥生にとっては最善の選択肢であったと思うのです。ただ、今後の成長をどう描くのかという点では、オリックスグループの一員になったほうが、戦略は描きやすいとは思っていました。オリックスグループのなかで小規模事業者を対象にした唯一の会社であるという強みを生かせると考えたからです。

一方で、上場という観点でいえば、私は創業社長ではありませんから、上場がゴールだという発想はありませんし、上場後、会社をどう発展させていくのかといったことを考えなくてはならない。これも、もちろん選択肢のひとつとしてはあったと思いますが、そうなると、成長戦略の描き方が大きく異なります。株式を公開している競合他社がひとつの指針にはなりますが、安定的な業績を背景に株価を維持し、M&Aを行うことで成長を遂げるということになったでしょうね。

ちなみに、オリックスグループは、親子上場は行っていませんから、今後、弥生が上場するということはありません。

社員にとってもプラス

――ストックオプションの付与や、上場会社の社員になるというモチベーションの観点、あるいは社員の採用といった観点から、上場したほうが良かったという声は出ていませんか。

オリックスは、東証一部とニューヨーク証券取引所に上場しており、その子会社であるという点では、これまでの状況に比べるとプラスだといえますし、ストックオプションも、それなりに価値を生んでいますので、社員にとってもプラスだったのではないでしょうか。私自身、どうしても上場したい、上場しかないという気持ちはまったくありませんでした。

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