衆参ねじれの歴史的教訓から読み解くこと

衆参ねじれの歴史的教訓から読み解くこと

塩田潮

 舌禍事件の柳田法相に対する問責決議案が参議院で可決される可能性が出てきた。菅首相は法相交代拒否の方針だが、ピンチが続く。

 民主党政権の苦境は、さかのぼれば「政治とカネ」、普天間問題の不手際などに加え、場当たり的で中身が見えない菅政治が原因だが、何よりも衆参ねじれを背負ったのが大きい。政権漂流を阻止するには首相に指導力や政策実現力が必要だが、一方でねじれ克服の「大業」を仕掛ける知恵と手腕も問われる。

 衆参ねじれは自民党結党以後、過去に1989年の参院選から93年の政権交代まで、98年の参院選から99年の自自公連立成立まで、2007年の参院選から昨年の政権交代まで、3度、経験がある。

 1回目は90~91年に当時の小沢自民党幹事長が主導する自公民路線で政権運営を行った。2回目は小渕内閣が金融再生関連法案で菅代表が率いる民主党の案を丸呑みするなど、2大政党の連携に走った。3回目は周知のとおり安倍、福田、麻生の3代の政権の連続沈没となった。

 89~93年と98~99年は政策協議による部分連合方式で一度はねじれ克服に成功するが、結局、次の非自民連立や自自公連立、民主・社民・国民新連立という「大業」が日の目を見るまで、「苦境の政権運営」という基本構図は変わらなかった。

 歴史から教訓を読み取るなら、ねじれ克服の「大業」には、まず当面の危機を乗り切る政策協議と部分連合の実験に挑戦し、一方で大胆な連立の組み替え、政界再編まで視野に入れる政治の構想力と実現力が試される。

 破れかぶれの解散・総選挙は論外だが、どこかで民主党政権の再出発が必要になる。協議を進める場合、決め手となるのは、人脈やネットワーク、密室協議での交渉力ではなく、政策や路線、政治の将来像だ。

 与野党の枠を超えた交渉も、国民の監視の下で幅広い国民の支持を獲得する連合を目指さなければ、以後の衆参の選挙で再びねじれを招く危険性がある。急ぐ必要はないが、その視点と発想と覚悟がなければ、菅首相も自民党の最後の3代首相と同じ運命に終わる可能性が高い。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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