女子の就活、「女性社員90%超企業」に要注意 3年後離職率を押さえておこう

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第1位のケーヒンはホンダ系の自動車部品メーカーで、電子制御装置を含む燃料供給系部品に強みを持つ。全社員4273人のうち女性社員はわずか711人(女性比率16.6%)にすぎない。しかし、女子の平均勤続年数は23.4年で、男子社員の平均勤続年数16.6年を上回る。そして2011年4月に入社した女子正社員の3年後離職率はゼロ%だ。

第2位のJFEスチールは国内2位、世界では10位の鉄鋼メーカー。全社員3963人のうち、女子社員は858人(同21.7%)。女子の平均勤続年数は22.9年で、男子の17.0年を上回る。3年後離職率はやはりゼロ%である。

3位の日本信号は、鉄道や道路の信号機で日本のトップメーカーだ。信号以外に自動改札システムや交通情報制御システムも手掛けている。全社員1183人のうち女性社員は170人(同14.4%)。しかし、平均勤続年数は男性の17.1年に対して、女性は22.6年と女性のほうが長い。3年後離職率はゼロ%である。

3社とも女性社員数が少ないが、平均勤続年数が長いだけでなく、男子社員を上回る。3年後離職率はいずれもゼロ%だ。「女性社員比率ベスト100」に掲載されている企業100社を見ると、自動車部品メーカー、電機・事務機器、建設業が多い。女子学生の間での就職人気が高くない企業の、平均勤続年数が長いことを知っておくべきだ。

ただし、例外はある。「女性社員比率ベスト100」と「女性勤続年数ベスト100」の両方に顔を出す企業は非常に少ないが、その中で目立つのが百貨店だ。阪神阪急百貨店、髙島屋、三越伊勢丹、松屋、東急百貨店が両方にランクインしている。百貨店という業種は女性社員が多いが、その女性社員にとって働きやすい環境を整えているということだ。

女性採用数と女性平均勤続年数は比例しない

また、「女性採用数ベスト100」と「女性勤続年数ベスト100」に掲載されている企業も大きく違う。「女性採用数ベスト100」には、2015年4月に入社予定の女性が多い順に100社掲載されている。女性を200人以上採用するのは、第一生命を筆頭にエイチ・アイ・エス、損害保険ジャパン日本興亜、JPホールディングスグループ、あいおいニッセイ同和損害保険、三井住友海上火災保険、トランスコスモス、SMBC日興証券、レオパレス、スギ薬局、ノジマの11社。

しかし、この11社は「女性勤続年数ベスト100」にはランクインできていない。女子を大量に採用する企業が、女性にとって働きやすいとは言い切れないようだ。採用人数が多いからといって安心してしまうのではなく、エントリーする前にじっくりと企業研究をしよう。

(撮影:風間仁一郎)

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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