(産業天気図・空運業)国内線堅調に国際線の回復が上乗せ、大手2社の収益は大幅に改善するが、低利益率には課題

同時テロ、イラク戦争、SARS、鳥インフルエンザとここ数年の空運業界は御難続きで、何が平常ベースか分からなくなっている。2003年度はSARSの影響が大きかった。成田空港の国際線旅客数が前年同期比水準となったのは11月以降で、2月までの累計では前年同期比88%の水準でしかない。6月末のSARS終息宣言後、ビジネス客は早い立ち直りを見せたが、団体旅行客の戻りの遅れが響いている。一方、国内旅客数の1月までの累計は7.9万人でほぼ前年並みの推移となっており、航空会社の収益を下支えする形だ。
 テロ、疾病等の発生がなければ、2004年度は2003年度より向上する。国際線は団体客の復調が見込めるが、テロに対する不安感が完全には拭えない現状では、戻っても同時テロ以前、2000年度の水準がやっとだろう。一方の国内線は、景気回復が追い風だが、前年度は海外旅行から国内旅行への振り替えが相当数あったと見られ、横ばいないしは若干の弱含みが予想される。つまり、国際線の回復分が上乗せされるイメージだ。ただ、コスト面で不安要因がある。燃油高だ。産油国の高価格維持政策が鮮明になり、イラク戦争終結後も燃油は1バレル30ドル以上と高止まり。日本航空システム(JAL)の場合、バレル当たり1ドル上昇すると約50億円のコスト上昇となる。円高メリットとの綱引きという面もある。
 国際線回復の影響が大きいのがJAL。前期はSARSのため第1四半期だけで769億円の営業損失を計上、稼ぎ時の第2四半期にも影響が残り、通期でも720億円の営業損失となった。今期はこうしたマイナス要因が消え、700億円程度の営業黒字になると四季報では予想する。会社予想810億円だが、下方修正の常連のため割り引いている。
 一方の全日本空輸(ANA)も、SARSで持ち越した国際線黒字化が今期に達成できる見通しで、営業利益は1.8倍の540億円程度と予想する。ANAで特筆すべきは、コスト意識に目覚めたという点だ。JALに比べ環境に左右されにくい国内線を基盤としていたために、バブル崩壊後も経費削減が甘かった。同時テロにJAL・JAS合併という経営環境の激変に見舞われ、尻に火がついた。機材を中型機主体にすることで運航経費を削減したり、国内旅客数トップという名を捨てて単価向上という実を取りに行ったり、人件費の削減(ベースダウン含む)したりと、手を打った結果、夏場以外は赤字という収益構造を変えることができたようだ。株価面で常にJALの後塵を拝してきたのが、最近逆転しているのは、こうした構造転換を好感されてのことだ。
 もっとも、両社とも外国航空会社に比べ収益率は低く、一層の経費削減が必要なことは変わらない。
 3番手のスカイマークエアラインズ(10月期決算)は前期後半に初めて黒字を計上、那覇線新設を見送ったことで立上げコストの発生がなくなり、通期での黒字決算が実現しそうだ。
 各社とも最悪期を脱し、力強さにやや欠けるものの上昇気流に乗ったと見ていい。
【筒井幹雄記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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