北欧ミステリードラマが熱い!『キリング』 移民差別、政治腐敗、虐待…社会問題を反映

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さて、北欧ミステリー文学の魅力や特徴について語るときに、よく言われるのが、虐待、アルコール依存、移民差別、政治腐敗など、深刻な社会問題を扱っており、人間ドラマとしても見応えがある作品が多いということ。これは映像作品にも言えることで、『THE KILLING/キリング』でも、最初に疑われるのは移民の男性で、増え続ける移民問題や治安の悪化との関連性、偏見や差別が浮き彫りになる。

かなり重要なパートを担うハートマンのパートは、選挙の裏舞台も含めて、まさに政治腐敗の告発にほかならない。ちなみに、シーズン2ではさらに国政の中心部へと深く踏み込む内容となっており、デンマークの国民が政府に対してどのようなイメージを抱いているか、失望感や不信感などをリアルに読み取ることができる。これは警察と政権の癒着や汚職などを扱ったパートでも、同じことが言える。

異文化を学べる

正直、筆者はデンマークについてさしたる知識もないため、なるほどそうなのか、あるいはどうなっているのだろう?と、興味が赴くままに調べてみるのも楽しい作業だ。建物や風景、食事なども含めて、にわかではあっても異文化を知ることは知的欲求を刺激し、また満たしてもくれる。

が、何と言ってもこのシリーズが視聴者を引き付けてやまない魅力は、ミステリーの王道中の王道ともいうべき犯人探しを主とする「誰がやったのか」、フーダニット(whodunit=Who done it?の略)という軸がブレない点にあるだろう。

筆者はミステリーが大好きで、これまでにも数え切れないほどの秀作、傑作に出合ってきた。それでも、『THE KILLING/キリング』は久々に仕事抜きにして熱くなり、毎回、あれやこれやと考えを巡らせながら、1話が終わると次が待ちきれないという中毒症状に陥った。

1話の中で、物語は何度もツイストする。政治や社会問題も色濃く反映された内容は時にヘビーだし、多くの登場人物のそれぞれに知られざる秘密や関係性、またルンドの私生活の人間模様もややこしい。それでも、毎回ラストでテーマ曲がかかり、「犯人は誰か」にフォーカスしてぐぐっと盛り上げて終わる作りは、シンプルに次が見たいと思わせる引っ張りも十二分だ。

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