部下を叱るときに、「策をもって叱るな」

感謝しながら、命がけで叱る

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

 「叱」という漢字は、「口を使って、相手を鋭い刃のように切る」ことを表しているという。ちなみに、「七」は、十文字という意味だそうだから、叱るとは、相手を十文字に口で切り刻むことと言えるらしい。だから、「切」も刀で切り刻むとなる。

松下からの厳しい叱り

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経営を担当するようになって、時折、厳しく叱られた。尋常でない叱り方で、頭のなかが真っ白になることもあったが、「叱る」ということは、語源からして、そういうことだから、尋常でないのが当たり前なのかもしれない。同じように、松下幸之助に叱られた先輩は、多分、数知れず、だろう。私と同じように、茫然自失した人も多いのは間違いない。

しかし、私もそうだが、たいていの人たちが、松下に叱られたことを、得々として、他人に話をする、しかも、誇らしげにする。普通は、叱られたことは、あまり他人に話したくないのが人情だと思うが、いろいろな場所で話をし、いろいろな書き物で綴っている。そういうこともあるのか、当時、巷間、しきりに松下さんは、部下の叱り方がうまい、と言われるようになっていた。

昭和53(1978)年11月のある日、外は、肌寒さを感じる一日であった。雑談の折に、直接、どのように叱るのか、叱り方のコツでも聞こうと思い、聞いてみたことがあった。

「えっ? わしの叱り方がうまい? みんな、そう言っておるんか。そんなことはないで。わしが叱るときか? わしが部下を叱るときには、いろいろ考えて叱るということはないな。とにかく、叱らんといかんから叱るわけだから、後のことを考えたり、この時はこういう叱り方をしようとか、そんなことを考えて叱るということはないな。そんな不純な叱り方はせんよ。私心なく、一生懸命叱る。策をもって叱るというようなことはせん。これがその部下のためにも、会社のためにもなると思うから、命がけで叱る。もちろん、叱りながら、その部下に対して、感謝の気持ちはあるわけや。感謝しながら、命がけで、叱るということやね。

けどな、叱るということは、その部下に期待しとるからやということもある。まあ、成長が期待できん者まで、叱っても意味ないもんな。

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