「日本株はウクライナ長期化でも大底圏」と読む訳 「スタグフレーション懸念」はどの程度深刻か

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ただ、大変申し訳ないが、2万5000円までの下落見通しにおおむね沿った形で実際の市況が動いたのは、まぐれにすぎない。これからの筆者の見通しは、大外れすることが多いだろう。

そもそも、ある局面で見通し数値がたまたま当たった専門家が、次の局面でも当たるかといえば、それは五分五分だ。つまり、コインを投げて、表が出るか裏が出るかと同じだ。したがって、専門家が唱える予想数値「だけ」を見ても、何の意味もない。

多くのマスコミなどで、専門家アンケートなどの形で予想数値をずらっと並べているものがある。その数値「だけ」見ても、何の役にも立たないだろう。

では、専門家は何の役にも立たないのだろうか。そんなことはない。重要なのは、市況予想の背景にある市場要因の着眼点や分析だ。

筆者は、そうした背景要因に基づく市場展望を予想数値の形で提示したほうが主張をご理解いただきやすいと考え、数字として出している。例えば「大きく株価が上昇する」という結論だったとしても、その「大きく」をどの程度だととらえるかは、人によって違うだろう。とすれば、「日経平均が〇〇円になると見込む」と数値で述べたほうが誤解は少なくなるといえる。

一段の下方修正を行う必要を感じない理由

余計なことを、多々申し上げた。さて今後の株価見通しに立ち戻ると、次のような指摘をよくいただく。

「馬渕さんは『株価が3月に最安値をつけるだろう』と言っていたが、その株価下落要因は、3月のFOMC(連邦公開市場委員会)の量的緩和の一段の縮小と、北京オリンピック・パラリンピック明けの米中対立だ、とのことだった。

FOMCは15~16日だし、パラリンピックも13日が閉会式だ。ところが、そうした株価下落要因がまだ実際に顕在化していないうちに、ウクライナ情勢で主要国の株価が下がり、すでに日経平均は2万5000円前後となっている。

ということは、FOMC後の緩和縮小や米中対立はこれからなのだから、日経平均は2万5000円よりもかなり深く下落するということでなければ、論理が破綻しているのではないか」

そうした指摘は、当方のこれまでの主張の内容(表面的な予想数値だけではなく)をよくご理解いただいていることに立脚しており、ありがたく感じるとともに、もっともなご指摘だと考える。

だが冒頭で述べたように、2万5000円前後が底値との見解は変わらない。それは、ウクライナ情勢は株価の悪材料として大きくのしかかったが、一方で、懸念要因について明るい方向への変化かもしれない点を見出しているからだ。

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