駅から撤去が進む「正確な時計」まだ知らない真実 一般向けとは違う仕組みで時刻合わせしている

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今回、時計が撤去されることになったが、時計自体からもあるものがなくなっている。それは照明で、かつての時計では内部に照明が組み込まれ、暗い駅構内でも時計の文字が明るく見えるように作られていた。

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時計の老朽化に伴って現行の時計に交換した際、時計に集光樹脂文字板を使用したことで、夜間でも周辺の照明を反射する形で時刻が見えるようなったのだ。時計の文字盤の色が白ではなく、緑だったりオレンジだったりするのは樹脂や蛍光塗料の色を反映したもので、マーカーペンや付箋のような色とも言えるだろうか。これにより、照明のための電源の配線が不要となったほか、内蔵の蛍光灯を交換する手間もないということで、当時としては相当な省力化が図れたのだった。

駅の時計は過剰設備?

ちなみに、筆者が電気時計・設備時計を知ったのは、設備屋として鉄道業界に就職してからのことだ。新人として座学で、「鉄道の設備として電気時計がある」と教習を受けたのだが、教官となる先輩から電気時計の仕組みを一通り教えられたあと、「この部屋にも電気時計があるのだが、こんな設備は過剰だと思うんだけどね。普通の時計で十分だろうよ」と言われた。

当時は携帯電話が普及し始めたばかりだったが、正確な時計を表示する腕時計が比較的簡単に入手できるようになった時代でもあった。この時点ですら正確な時刻を簡単に知ることができたのだが、筆者が先日入手したスマートフォンでは初期設定で時刻が自動で表示され、時計の調整自体が要らなくなっていた。

時計が埋め込まれている東京駅丸の内口駅舎。鉄道と時計は深い関係にある(筆者撮影)

ここまで来ると、重厚な設備となってしまう電気時計・設備時計の存在意義は何なのか?ということにもなるだろう。

これが撤去という形で見直しとなることも驚いたが、重厚・無駄を思う反面、鉄道の定時運行を支え、ランドマーク(特徴物)ともなる時計が駅から消えるというのも、時代の変化を反映したものなのだろうか。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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