日本人がしがみつく「東京モデル」の悲しい結末 河合雅司×牧野知弘「人口減少で仕事はどうなる」

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私たちに突きつけられているのは、人口膨張により成功してきた「古き良き東京」を一度捨て去り、人口減少時代に適した「新・東京モデル」へと転換することです。

前述のように2025年に東京都の人口がピークアウトするわけですから、遅くとも2030年には“激変の入り口”に立ちます。それまでに道筋をつけなければなりません。この数年間が勝負なのです。

では、現状のまま突っ走ったならば、どんな未来が待っているでしょうか。『2030年の東京』から「仕事はこうなる」を抜粋してご紹介します。

「東京モデル」の終わり

河合:日本経済は、2030年になると人口激減の影響が色濃く表れてきます。働く人数が減るということは総仕事量が減るということですので、これまでの人口規模を前提としたビジネススタイルを貫こうとすると、圧倒的な労働力不足に陥ります。これを解決するには、2つのことを同時に達成しなければなりません。

1つは、成長が期待される分野へと産業構造を集約化していくこと。もう1つは、働くすべての人それぞれのポジションに応じて職能をアップしていくことです。

大切なのは、1つ目の産業構造の転換です。「AI対応だ、DX(デジタルトランスフォーメーション)化だ」と言っても、それらは手段にすぎません。問われているのは、そうした最先端のデジタル基盤を使ってどのような社会変革を起こし、新しい価値を生み出すかです。日本ならではの成長産業を生み出すことができなければ、それこそ日本沈没シナリオが進むでしょう。

(出所:『2030年の東京』)

牧野知弘(以下、牧野):今後、人口減少によって国内マーケットが加速度的に縮むなか、従来のような量的拡大一辺倒での成功は不可能です。たとえ2倍の売り上げをたたき出しても、利益が2倍になっていなければ(利益率が維持できなければ)、労働生産率が下がっているわけですから、それはいいことではなく、むしろ悪いことであると考えなければなりません。そのためには、ジョブ型雇用の促進が求められるわけです。

河合:企画・開発部門を東京に集中させ、地方に工場を建設して雇用を生み出すモデルは“一億総中流”という幻想を創出し、大量生産を可能にしました。それによって日本は高度経済成長を実現しましたし、働く側も終身雇用、年功序列賃金といった安定雇用を享受してきました。

しかし、「集積の経済」の成功体験があまりに強かったものだから、多くの工場が海外に移転し、小売業やサービス業が中心となって以降も、東京一極集中がむしろ加速しました。現在の東京は過去の成功体験の余熱で“飯を食っている”状態です。この余熱はあと10年ほど続くかもしれず、私は危惧しています。現在の人口規模を前提とした「東京モデル」を意識の中から早急に捨て去ることが必要です。

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