超ヤバい経済学 スティーヴン・D・レヴィット スティーヴン・J・ダブナー著/望月 衛訳~文句なく楽しめる経済学の切れ味と意外性

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 人々にインタビューするときの答えの歪みは、本書の大きなテーマだ。実験経済学の導き出した定説も厳しく批判されている。「研究に参加すると申し出て、調査員とその後会い続ける大学2年生を相手に絞った科学」にしかならないというものだ。実験経済学で示された「人類の思いやり」に対する疑義は説得的だが、より広くファイナンス分野での定説についてはどうなのかも知りたかった。だからといって、人間がまったくのクズではないという話もある。お見事と言いたくなる。

大問題に対して、わずかなコストで解決できることが多いという。2歳以上の子どもの場合、シートベルトでも大人用ベルトでも、事故に遭って助かる確率は変わらない。地球温暖化を防ぐ、驚くほど安い方法も紹介されている。だが、安い方法は試されそうもない。私は長い間、日本の長期停滞というマクロ的な問題を解決するためには、金融緩和という安価な方法があると言い続けてきたのだが、採用されていない。不合理なのは、日本の偉い人だけではないようなのは慰めになる。

最後の注も面白い。最初から最後まで、経済学の切れ味と意外性を文句なく楽しめる。

Steven D.Levitt
米シカゴ大学経済学部教授。2003年、2年に1度40歳未満で最も影響力のある経済学者に与えられるジョン・ベイツ・クラーク・メダルの受賞者。

Stephen J.Dubner
ニューヨーク市在住の作家・ジャーナリスト。米ニューヨーク・タイムズ・マガジンで書き手と編集者を務め、ニューヨーク・タイムズ、ザ・ニューヨーカーなどに寄稿の経験を持つ。

東洋経済新報社 1995円 291ページ

    

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