若手議員の「革新力」は政治を変えるか 第2回 ネットを活用、あえて難題に挑む

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前述のようにマスコミも地方政治、議会の報道量は少ない。リーチ力でマスに劣る場合の多いネットは、一時的に関心を集めてもそれが持続するかは微妙だ。ヤジ問題で脚光を浴びた音喜多さんのブログも、社会保障などの地味なテーマは「アクセスは伸びないのが現実」という。しかし発信し続けることで、まず利害関係者から注目される。他党のベテラン都議には「議会のことは議会で言うように」と煙たがられたが、「都の職員が事前にブログを読んでいるのでコミュニケーションが取りやすくなった」という。

若者層の注目を掘り起こす兆しもある。得票につながらず負のイメージが定着しつつあるネット選挙だが、「票は作れないが、仲間を作ることができる」と音喜多さん。みんなの党公認候補とはいえ、水道工事店の家庭に生まれた本人は地盤、看板、かばんもない中での出馬。しかしブログのファンや友人ら400人が集まりボランティアで選挙を支えた。

交番の記事を書いた時には、プライベートで通うダンス教室で、受付をしていた金髪の若者に「あのブログを書いた音喜多さんですか?」と声をかけられた。今年8月からは、ネット上のブログやツイート情報を解析する「ソーシャルボイスラボ」を開始。いわゆるビッグデータの活用により、「こちらから隠れたニーズをつかみにいきたい」。ギャンブル依存症、危険ドラッグなど、新しい課題を解決する政策立案を目指す。

コミュニケーションで渋谷の街をプロデュース

清掃活動に参加する長谷部さん。博報堂時代に培った見識を街の取り組みに生かす(提供写真)

しかし政治は人々の利害を調整するリアル社会の極致。若者や都市住民の関心を集めて成果をカタチにしていくにはハードルが一気に上がるように見えるが、「若い人たちは何らかの形で街の役に立ちたいと思っていて、参加するきっかけを求めている」。そう語るのは、渋谷区議の長谷部健さん(42歳、無所属)。過去10年余り、街の清掃活動を行うNPO法人グリーンバードの活動や市民大学等の取り組みを通じて得た経験によるのだという。

長谷部さんは大学卒業後の6年間、博報堂に勤務。大手音楽ショップやコンビニ大手等の案件を手掛けた中で、海外のある広告に目が留まる。ベネトンが「STOP AIDS」を掲げ、コンドームを配布したセーフセックスのキャンペーン。「その強いメッセージにドキッとさせられた」。

1990年代後半、企業のCSR(企業の社会的責任)が注目された時流を意識し、社会貢献への思いを募らせた。当初は、生まれ育った地元・表参道の商店街の活性化を裏方として手伝うつもりだったが、商店街で働く同級生たちから「この街のプロデューサーになってほしい」と区議選への出馬を強く働きかけられたことが転機となった。

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