世界が共感、ゼレンスキー氏の「超コミュ力」5本質 卓越した「パフォーマンススタイル」の中身は?

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スタイル② 徹底した「アンチエスタブリッシュメント」

「私は政治家ではない。私はこの(腐敗した)システムを壊そうとする普通の人間だ」という言葉どおり、彼は徹底して既得権益に縛られない「アンチエスタブリッシュメント」であることを強調してきました。

冷淡で事務的、官僚的なエスタブリッシュメントではなく、庶民の気持ちがわかるごく普通の人間だ――。これはアメリカのトランプ前大統領がよく使ったレトリックですが、人は「自分の気持ちがわかってくれる」と感じさせてくれるリーダーに、否応もなくひかれるものです。

その姿勢を体現するように、彼は自身の政党を、高校教師を演じたドラマのタイトルと同じ「Servant of the People(国民のしもべ)」と名付けました。「大工に話すときは大工の言葉を使え」というソクラテスの言葉通り、平易でわかりやすい言葉を使い、徹底して「俺たちの大統領」と思わせる戦略を貫いています。

「私たちは私たちのために戦い、私たちに仕え、私たちのために犠牲を払うリーダーについていく」と、ペンシルバニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授はゼレンスキー大統領の言動をこうたたえていますが、まさに、その姿勢を全身全霊で体現する姿に、国民や世界の人々の支持が集まっているのでしょう。

歯切れよく「心に残るメッセージ」を発信

スタイル③ 卓越した「言葉力」

ゼレンスキー大統領は、たぐいまれな言葉の力で世界中の人々の心をとらえています。

●「私はこれまで、ウクライナ国民を笑顔にすることに全力を注いできた。これからの5年間は、彼らが涙を流すことがないように、全力を尽くしたい」(就任演説でのスピーチ)
●「私たちはここにいる。ほかの戦士もここにいる。この国の市民もここにいる」
●「私たちは武器を下ろさない。私たちは私たちの国を守る。なぜなら、私たちの武器は真実だからだ。真実とは、これは私たちの地であり、私たちの国であり、私たちの子どもたちだ。私たちはそれを守るのだ。ウクライナに栄光あれ」
●「冷戦も、熱い戦争も、ハイブリッド戦争もいらない」
●「私たちを攻撃するとき、あなた方が目にするのは、私たちの顔だ。(逃げる)私たちの背中ではなく、私たちの顔だ」
●「誰が、最も苦しむって? 人々だ。誰がそれ(戦争)を望まないか? 人々だ。誰がそれを止められるか。人々だ。そういった人々があなた方の中にいるか。私はそう思う」

「対比」「繰り返し」「韻を踏む」など「超一流のスピーチ術」を縦横無尽に駆使し、歯切れよく「心に残るメッセージ」を発信し続けています。

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