知識を潔く捨ててこそ、ミステリーが解ける--『宇宙は何でできているのか』を書いた村山斉氏(東京大学数物連携宇宙研究機構長・特任教授)に聞く

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知識を潔く捨ててこそ、ミステリーが解ける--『宇宙は何でできているのか』を書いた村山斉氏(東京大学数物連携宇宙研究機構長・特任教授)に聞く

物質を作る最小単位の粒子である素粒子。「素粒子物理学で解く宇宙の謎」を副題にした「限りなく小さくて大きな物語」の売れ行きが好調だ。人類永遠の疑問に挑むことは、「経験を捨て、発想を転換する」ビジネス一般とつながるという。

──21世紀に入り、宇宙の理解が劇的に変わったようですね。

今までは単純に「万物は原子でできている」と思われていたが、実は宇宙のほとんどは原子でないということがわかった。2003年にそれがはっきりして、これは天道説が地動説に引っくり返ったのと同じぐらい革命的なことだ。

──宇宙の95%以上は「原子以外のもの」が占めていると書かれています。

それが何でできているか、まだわかってない。ただし、暗黒エネルギーが73%を占め、そのほかに暗黒物質が23%あることもわかった。その存在を前提にしないとつじつまの合わない現象があるからだ。暗黒エネルギーは宇宙の運命のカギを握り、暗黒物質は宇宙の始まりと進化にかかわっている。

──素粒子物理学が専門で、なぜ宇宙の研究を。

誕生直後の宇宙は、素粒子が原子にならない状態でバラバラに飛び交う、高温高圧の火の玉だった。だから、素粒子の種類や素粒子に働く力の法則がわかれば宇宙の成り立ちがわかるし、逆に、宇宙の現象を観測することで素粒子の謎も明らかになる。

──本のタイトルの「宇宙は何でできているのか」という疑問にも答えが出せる?

同時に、「宇宙はどうやって始まったのか」「どうして、自分たちはこの宇宙にいるのか」、さらに「宇宙は、これからどうなっていくのか」といった根源的な疑問にも答えたいと思って研究活動をしている。

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