(第39回)かつて世界を制覇した日本半導体産業の凋落

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(第39回)かつて世界を制覇した日本半導体産業の凋落

1980年代の末に刊行された『Made in America』は、日本の製造業を高く評価した。特に絶賛したのは、半導体産業である。

確かに、その当時の日本の半導体メーカーの活躍ぶりは目覚ましかった。90年における半導体の売上高の世界シェアを見ると、NEC、東芝、モトローラ、日立製作所の順であり、日本のトップ3社で、世界の約3割のシェアを占めていた。

ところが、現在のトップ3社は、インテル、サムスン電子、テキサスインスツルメントだ。この3社で、世界シェアの約4分の1になる。

これほど顕著な変化が、この20年の間に生じたのだ。これは、日本の地盤沈下を象徴する変化である。

日本の凋落を論じるとき引き合いに出されるのは、一人当たりGDPの相対地位の低下などのマクロ的指標だ。これは確かに重要ではあるが抽象的である。したがって、なぜ変化が起きたのかをとらえにくい。

それに対して、半導体産業における敗北は、具体的な事象であり原因の所在も確かめやすい。そこで、以下ではそれについて考えてみよう。

最初に注意すべきは、『Made in America』が絶賛した日本企業の特性(短期利益に左右されない、人材が企業から離れない、銀行との間で株式の持ち合いがある、など)は、今でも続いていることだ。それにもかかわらず、逆転現象が生じたのである。それはなぜだろうか?

日本の産業競争力が低下した理由として、企業再編が進まなかったことが指摘されることがある。しかし、半導体分野では再編が進められた。DRAM(メモリ素子)については、NECと日立が99年にエルピーダメモリを設立し、システムLSIについては、日立と三菱電機が03年にルネサステクノロジを設立した(10年にはNECも加わり、ルネサスエレクトロニクスとなった)。しかし、日本の劣勢を挽回することはできなかった。異なる企業の人材がうまく融和できなかったということもあるが、より大きな原因は、従来のビジネスモデルを変えられなかったことだ。

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