神奈川県、iPad導入で「関所」が減った! 黒岩祐治知事が語る1600台導入効果

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紙資料だけでなく関所も減った

そして、そうしたプレゼン資料の「ペーパーレス化」は、元々の知事の目的につながっていく。

「ここでなくなるのは最終的な紙資料だけではないんです。『関所』のたびにこれが起きていた、ということですよね。企画会議のたびにプレゼン資料を作り直して、またコピーして配り直して……。それが私のところまで上がってきて修正されると、また元に戻って作り直していた。その繰り返しだったとすれば、ひとつの政策決定のプロセスの中で、いったいどれだけの紙を使い、どれだけ印刷し、どれだけ『コピー』という仕事に時間を使っていたのか、ということがわかってきたんです」

「いままで不要だった、『コピー』という業務のためにかかっていたコストと労力がピタっとなくなりました。それは一週間で体感できましたね。単純なことかもしれません。しかし、習熟度がいちばん遅れていた私だからこそ、そうした部分がすごくよく見えてきた部分があります。『これはすごいぞ!』と」

結果的に起きたのは、プロセスの短縮という、元々、黒岩知事が狙っていたことだ。

「いままでは資料の再検討に時間がかかっていたものが、すぐに戻ってくるようになりました。『ここ、もっとこうすべきじゃないか』と提案すると、すぐに修正されて帰ってきます」

自由に使えるタブレットが生み出した機動力

ただ、こうしたことに違和感を持つ人もいるはずだ。ITに詳しい人ほどそうだろう。メールやグループウエアを使えば、過程での印刷は今でも減らせる。会議で資料を見る場合にも、タブレットでなくパソコンを使えばいい。それぞれの過程は昔から存在する「ペーパーレス化」の恩恵そのもので、タブレット固有のものではない……、そう感じる。その点は、黒岩知事も認めるところだ。だが、「タブレットという形であったことは、実際には大きな影響があった」と話す。

「パソコンでもできる、というのはその通りです。そうしようとしたこともありました。しかし実際の作業の中では『パソコンだと資料に線が引けないじゃないか』みたいな指摘が多くて、できなかった。変えようと思えば変えられたはずなのに、できなかったんです」

「実は1回、ちょっとパソコンでやってみたことがあるんです。政策会議を、普段仕事に使っているパソコンで全部やろう、としてずらっと並べてみたんですが……。でも、パソコンから発する熱だけで、部屋中がなんか、大変なことになってね(笑)。ケーブルも多くて。段取りをするだけで大変な手間暇がかかってしまった。誰も便利さを感じなかったんですね。でも、iPadをもってきた瞬間に、皆がすぐ価値がわかった。すぐ電源が点くだけでも違う。慣れるのも早かった。目に見える範囲での習熟度というか、慣れるまでの時間が全然違ったんです」

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