神奈川県、iPad導入で「関所」が減った! 黒岩祐治知事が語る1600台導入効果

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そこで黒岩氏が目をつけたのが、黒岩氏のところまで政策が上がってくるまでの過程だった。

「私のところに来るまで、どういう風に政策が作られているかはなかなか見えません。私に見えるのは、最後の結果、局長クラスが私に説明する部分だけです。しかし、その過程をたどってみると、非常に『関所』が多い。ずっと民間のジャーナリズムの中で育ってきた私の目から見ると、とても無駄が多いんです。過程でそんなに丁寧にやる必要はないだろう……と思うことが多い」

どんな政策もアイデアから生まれる。そのアイデアを検討し、実際に形にするには多数の人の手を経ていくのが通常だ。それはそれでいい。しかし、『最初のアイデアのほうが良かった』と思うこともあれば、体裁を整えるために何度も内部でやりとりが行われ、作業が滞ることも多い。『テレビの世界では、面白ければアイデアひとつで動く。A4の紙に数行書かれただけの企画書から、大ヒット番組が生まれた例なんていくらでもある』」と、これまでの経験との違いを語る。

雑でもいいから生の話がしたい

職員の手もとにはiPad

「問題はどうやって関所を減らすか、ということです。綺麗に綺麗に企画書ばかり作ったってしょうがない。もっと荒々しく、雑でもいい。そういう生の話がしたい。直に言って欲しいんです。ゴールに向けてどれだけスピード感をもってやっていけるか。それをずっと考えていました」

そこで道具として使ったのが「電子化」であり「タブレット」である。

ITに詳しい人だと「そこでメッセージングサービスなどを使って、対話を促進したのだろう」と考えるはずだ。筆者もそう考えた。だが、黒岩知事と県庁の採った策は違っていた。もっとプリミティブなものだったのである。答えは「会議のペーパーレス化」だ。

写真は、iPad導入後の県庁での会議の様子である。手元にあるのがiPadだけで、紙は少ない。

「以前は会議のたびに大量の紙資料が配られていました。職員から私には、1日に何十件もプレゼンがありますが、そのたびに資料が出てきました。

しかし、ある日突然、紙がいっぺんに消えたんです。もちろん、まだ紙で持ってくる人間もいましたよ。しかし、一週間もたたないうちになくなりました。幹部会・政策会議のたびに何千枚、という紙があったわけですが、それがなくなりました。

その時に気付いたんですが……。この会議室にあった何千枚という紙は、誰かが全部コピーして、ホチキスで止めて、配ってたんだな、その仕事を誰かがしていたんだな、ということです。それが、iPadになることで一気になくなった。紙代、コピー代が目に見えて安くなりましたが、そうした業務をやっていた人々の労力が軽減されました」

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