ホンダ、歴代社長が伊東社長に苦言 リコールの嵐に揺れる

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 11月17日、ホンダで前例のない連続的なリコール(回収・無償修理)が起き、伊東孝紳社長(61)率いる現経営陣が厳しい対応を迫られている。5日撮影(2014年 ロイター/Mike Blake)

[東京 17日 ロイター] - ホンダ<7267.T>で前例のない連続的なリコール(回収・無償修理)が起き、伊東孝紳社長(61)率いる現経営陣が厳しい対応を迫られている。リコールの影響で品質の再検証に時間と精力を割かれ、その結果、新型車の発売は1年間もゼロの状態だ。

ホンダ車の5割が搭載するタカタ<7312.T>製エアバッグの異常によるリコール問題も米国で深刻化し、さらに追い討ちをかけている。伊東社長は危機をどう乗り切るのか、同社役員OBからも心配の声が上がっている。

歴代社長が伊東社長を訪問

今年10月、1990年から98年まで社長を務めていた川本信彦氏(78)が本社(東京・青山)に出向き、伊東社長を訪れた。元役員など複数のホンダ関係者によると、ここ数年、急増しているリコールについて、ホンダブランドのダメージにつながりかねないとして、品質問題にすばやく対応するよう厳しい口調で諭したという。

「いったいホンダはどうしたのか。どこかがほころんでいる」――。1980年代の経営陣の1人で、川本氏の訪問を知る元役員は、ロイターの取材に対し、「ホンダの社内はほとんど危機感を感じていないのでは」と懸念を示した。「川本氏はそうした社内の雰囲気にフラストレーションが募り、わざわざ伊東社長に会いに行ったのだろう。ただ、伊東社長が川本氏の真意を理解したかどうかはわからないが」。元役員はそう続けた。

ホンダは10月23日、看板車種「フィット」のハイブリッド車(HV)など約42万台をリコールすると発表。リコールの回数は、昨年12月に発売した小型SUV「ヴェゼル」のHVで3回。昨年9月に投入したフィットHVでは昨年10月と12月、今年2月と7月も実施しており、発売から1年間で実に5回を数える。2011年以降、原動機付二輪車「スーパーカブ」でもリコールが5回続いている。

リコール制度は、少しでも不具合が見つかれば、重大事故につながらないよう隠さず速やかに回収・修理して対応するもので、リコールそのものは悪いことではない。フィットの場合をみても、不具合の部位は5回すべてが同じではない。ただ、同一車種、しかも新型車が発売直後のわずか1年間で5度や3度もリコールを実施するのは「前例がなく、検証が不十分だった」(ホンダ広報)ことは否めない。役員OBらが 「今のホンダは根本的にどこか悪いのでは」と感じるのも無理はない。

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