黒田総裁は、「松岡修造効果」を狙っていた? 株価急騰後の、海外短期筋の売りに注意

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黒田総裁が目論んだのは、景気への「松岡修造効果」だけではなかろう。「安倍ちゃん、熱くなれよ~、俺が追加緩和で景気を支えるから、思い切って予定通りに消費税率を上げろよ~!」という意図もあっただろう。実際、追加緩和直後には「これで消費税率引き上げの外堀が埋められた」との声が多く聞かれた。

黒田総裁は、自分で穴に落ちた?

ところが安倍首相は、消費税率引き上げを先送りする方針を、国民に総選挙で問うようだ。この場合、財政再建の遅れと投資家に判断され、国債に売りが嵩んでも、日銀が買い向かう、という形になってしまう。ある意味、黒田日銀が熱い思いで国債を買うからこそ、首相は憂いなく再増税を先送りできるとも言える。

つまり、黒田総裁は、自分が意図したのとは全く逆の役割を演じるという、落とし穴にはまったのかもしれない。

黒田総裁は13日に参議院財政金融委員会で、「追加緩和は予定通りの消費再増税が前提だった」と、質問に答える形で表明したが、後の祭りだろう。

実は、日銀が10月中に追加緩和を検討している、との気配は、どの情報筋からも、事前には全く聞こえてこなかった。

追加緩和の議決が5対4と僅差であったことからも、どうやら黒田総裁の独走に近い形だったと推察される。

その点では、穴に落ちても自業自得と言えなくはないが、勝手に走って勝手に落ちたとなれば、総裁の求心力は著しく失われた恐れがある。今後の金融政策に支障が生じなければよいのだが。

その首相の消費税率引き上げ先送りと総選挙について、外国人投資家がどう解釈しているか、ということだが、株価上昇材料との判断が優勢なようだ。

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