個性的すぎるパン屋「小麦の奴隷」が成功するワケ ホリエモン発案「地域活性化」を目指すビジネス

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2021年12月には本格的なスイーツ「とろ生バスクチーズケーキ」(1980円)を発売(撮影:今井康一)

また2021年12月には冷凍の新商品「とろ生バスクチーズケーキ」(1980円)を発売した。店名に反して小麦粉は不使用。北海道産のフレッシュクリームチーズを、湯煎をしながらオーブンで焼きあげ、独特のなめらかな食感に仕上げた。設定客単価よりかなり高いが、ほかにないトロッとした食感が好評とのことだ。冷凍しておけばいつでも食べられる手軽さも、今人気のスイーツのポイントを押さえている。冷凍庫から出してすぐならアイスケーキのような食感が、20〜30分常温に置くと、トロッとした食感が楽しめる。

そのほか人気があるのは塩のみで味つけし、バターの香りと生地のおいしさが感じられる「ちぎってモグモグ」や食パンなどだそうだ。いずれも140〜390円程度の30種類ほどを販売している。

安定した販売を確保するため「訪問販売」も

また、天候などによらず安定した販売を確保するため、訪問販売を取り入れている。販売車による移動販売と、事業所などに売場を展開する訪問販売の2種類を週5日程度のペースで行っているそうだ。

代表取締役の橋本玄樹氏。自ら率先して楽しむことで、お客を楽しませる店づくりが目標という(撮影:今井康一)

さらに成功の要素として、「エンタメパン屋」をうたった明るい接客、SNSでのこまめな情報発信が挙げられる。ベーカリーとエンターテインメントの組み合わせは、音楽バンドや演劇の経験もある橋本氏の人となりを生かしたアイデアだそう。

「おいしいパンを売るのは当たり前。いかにお客様を楽しませるかで独自性を発揮しています」と橋本氏。

橋本氏は全国の店舗や江東区にある研修施設を回り、代表としてだけでなく「エンタメ隊長」として店長やスタッフを鼓舞しているという。

今回、研修施設を訪ねたが、確かに研修の雰囲気は楽しげだった。異なる地域から4名程度が訪れており、研修を通じ横のつながりもできる。同社では店舗間でのSNS連携を奨励しており、アイデアや成功体験の共有を促しているそうだ。さらに研修施設内では「今日SNS発信しましたか?」の注意喚起貼り紙も瞥見された。

都内の研修施設。ただし地域活性化を目指すビジネスモデルであることから、FC店は基本的に人口5万人以下の地域へ展開する(撮影:今井康一)

研修施設は店舗も兼ねており、研修で製作したパンを3割引きで販売している。日に50〜100人の客が訪れるそうだ。立地は森下・清澄白河の、観光スポットや住宅街、企業などが混在するエリアだ。カレーパンが名物の老舗「カトレア」もあり、新しいベーカリーも雨後の竹の子のように増えている。ただ、3月末、都内の別の場所に移転予定とのことだ。

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