専門家が警鐘「停戦交渉」が楽観視できない理由 ゼレンスキー大統領が多くの人を動かしている

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専門家はウクライナの軍力は散らばっており弾薬も限られていること、よく訓練された何千ものロシア兵がまだ戦闘に投入されていないことに言及。懸念すべきは、戦局が泥沼化すれば、プーチンは都市の砲撃といったより厳しい戦術に移るかもしれないということである。

ロシア軍の爆撃を受けたキエフ南西部に位置する高層ビル(写真:Lynsey Addario/The New York Times)

プーチンの今回の核戦力による脅しは、ウクライナへの支援を強めつつある欧米諸国に向けられているようである。プーチンは国営テレビで放送された短いコメントにおいて、欧米諸国の「攻撃的な」言動に対する措置として、国防相と参謀総長にロシアの核戦力を特別警戒態勢におくよう命じたと述べた。

プーチンが言うには、欧米諸国はロシアに対して「不当な制裁」を科しているだけではなく「NATO主要国の高官はわれわれの国に対して攻撃的な発言までしている」。

何らかの誤算があれば事態はさらに危険に

アメリカのホワイトハウスはサキ報道官を通して、今回の核戦力特別警戒はプーチンが脅威を捏造することで軍事衝突の正当化に使ういつものパターンであるとした。

ポーランドで家族を迎えるウクライナ人男性(写真:Maciek Nabrdalik/The New York Times)

記者団に対し概要を説明した関係者によると、アメリカ国防総省高官はアメリカが自国と同盟国を防衛する能力については依然として確信を持っている。当関係者は、プーチンがロシアの核戦力を特別警戒に置いたことを不必要なうえ緊張を高める行為であるとし、何らかの誤算があれば事態をはるかに危険にする可能性があると述べた。

ウクライナの抵抗と自国の兵站が不十分であることから計画に遅れがでているため、ロシア軍がチェルニヒウ市内やキエフ北東部へのロケット攻撃など厳しい攻撃をすでに始めていると、国防総省は発表した。これらの作戦により一般市民の犠牲がさらに増えるだろう。

ウクライナからポーランドへ退避してきた人々(写真:Maciek Nabrdalik/The New York Times)

当局によると、ロシア軍は周囲の人間は皆自分たちの敵だという強迫観念を抱えており、このため彼らが一般市民を殺害したり、インフラ設備を破壊する可能性が高い。

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