産業天気図(百貨店・スーパー)百貨店は苦戦続くが回復の兆し。スーパーは出店で収益回復狙う

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百貨店業界の2003年の売上高総額は対前年比2・8%減の8兆1119億円(日本百貨店協会)と7年連続の前年割れ。天候不順の影響もあったが、不況業種のレッテルを剥がすには至っていない。しかし、2004年2月は前年同月比2・3%増と4カ月ぶりのプラス。東京地区でみると、0・3%増ながら27カ月ぶりのプラス。さらに6大都市でみると、全都市がプラスで2・1%増と26カ月ぶりのプラスとなった。ここ最近の3カ月異動平均値は、2003年9~11月がマイナス3・1%、10~12月がマイナス2・5%だったが、12月~2004年2月はマイナス0・8%と改善してきている。2月は営業日数および日曜日の増加もあり、改装・セール効果が寄与したが、業界にとっては春の兆し。消費回復が本格化するのかどうか、まだ予断は許さないものの、株式市況の回復から富裕層を中心とする顧客が戻ってきたとの声も聞かれる。ただ、法人需要は引き続き減退。天候にもよるが、一本調子の回復はまだ望めそうにない。
 しかし、売り上げが伸びない中にあっても各社の業績は回復に向かっている。店舗リストラ、人件費削減、広告宣伝費抑制など、ここ数年の構造改革努力が数字として表れ始めている。高島屋や三越の業績増額修正にみられるように、営業利益が急回復しているところも少なくない。総花的な安売りを止め、改装も含め百貨店ごとの特色ある営業施策を打ち始めるなどの努力もみられる。ただ、同一地域内では競争は激しく、パイ食い合いで勝ち組・負け組の二極化もみられる。
 スーパー業界は2003年、冷夏、暖冬など天候要因に泣かされた。食品は比較的堅調だったが、衣料品、住居関連商品の影響が大きく、各社が売上高を落とした。日本チェーンストア協会の統計では、スーパーの昨年1年間の既存店売上高は3・2%減と落ち込んだ。2004年は気温上昇で衣料品が動き出したことで、2月の既存店は4カ月ぶりに前年比プラスを記録したが今後、総額表示実施による消費マインドの冷え込みが懸念されるなど、不透明な部分も多い。イトーヨーカ堂、イオンの大手2社の前期連結決算は共に子会社の健闘で増収増益を守ったが、本体の総合スーパーはともに3割前後の営業減益と不振を極めた。
 今期はイトーヨーカ堂が新企画チームを核に衣料品のマーチャンダイジングを強化し、巻き返しをはかる。イオンは総合スーパーだけでなく、食品スーパー、新業態の「スーパーセンター」など旺盛な出店をけん引役に回復を狙う。ともに単体利益は増益に転じる見通し。子会社の好調は当面続きそうなだけに、これが実現すれば、連結業績にも弾みがつくことが予想される。  
【木村秀哉、堀川美行記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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