英国名門大生の知性は「共同生活」で磨かれる 日本の忍者マンガやラーメンも「創造」の材料に

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カレッジ制が生んだアイデアの源流

2つの大学は中世より存在した。オックスフォードは1096年ごろに自然発生、ケンブリッジは1209年の設立だ。それぞれの大学は明確な方向性を示しながら、イギリス社会の根本を担っていた。

英国首相26人、ノーベル賞受賞者27人の母校であるオックスフォード大学は、国や世界を動かす政治家を多く輩出してきた。一方、ノーベル賞受賞者を世界最多の90人輩出してきたケンブリッジ大学は、主に国や世界を牽引する研究者を養成している。イギリスには、ほかにもインペリアル・カレッジ・ロンドン、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなど、世界トップレベルの大学があるが、中でもオックスブリッジは、歴史や伝統、大学の規模、システム、財政力から特異な存在となっている。

アイデアのリミッターを外せ!

アイデアを生む発想力が貧弱になるのは、子供のような純粋無垢な気持ちがなくなったからではない。アイデアを創るピースの種類不足にある。

たとえば同じような知識、経験、価値観を持つ人が5人集まって話をするのと、それらがまったく異なる5人が集まって話すのとでは、出てくる話題とアイデアのバリエーションに大きな差が出てくる。これは複数人が集まって話をする機会だけでなく、自分ひとりのときにも言える。

成長とともに自分の好きなピースの組み合わせに頼るようになり(もちろんこれも重要だが)、すると新たなピースとなる自分にはない知識や経験、価値観の重要さを軽視してしまう。インプットをしなくなれば新たなピースの組み合わせを創ることができず、息切れを起こしてしまう。気づかないうちに“視野が狭い”と表現されてしまうことになるのだ。

「出る杭は打たれる」「普通じゃない」「縦割り社会」「象牙の塔」。そんな言葉にも表れているように、残念ながら、日本にはそうなってしまう素地がある。よいピースたちやその予備軍を持て余し、組み合わせの数にリミットがかかっている感は否めない。しかし、まだまだできることはたくさんあるのだ! 有史以来日本社会が積み上げてきた英知は、決して他に劣っている訳ではないのだから。

 

岡本 尚也 物理学者・社会起業家

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おかもと なおや / Naoya Okamoto

1984 年、鹿児島県に生まれる。慶應義塾大学理工学部卒、同理工学研究科修了後、ケンブリッジ大学にて物理学博士号を取得。その後、オックスフォード大学にて日本学修士号を取得。ケンブリッジ大学在学中の研究成果がNature Materials 等、世界トップジャーナルに論文が掲載された。帰国後、NPO法人を創業し、現在は一般社団法Glocal Academy 代表理事。社会や学術における諸課題を研究的手法を用いて解決する事を目的とし、後進の育成やそれら課題に取り組む個人及び企業・団体を支援している。http://glocal-academy.or.jp/

2016年冬に新興出版社啓林館より『課題研究メソッド―より良い探究活動のために―』を出版予定。

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