明治新国家のリーダーがいま、私たちの教えるもの

明治新国家のリーダーがいま、私たちの教えるもの

塩田潮

 民主党の小沢元代表の国会での説明問題をめぐって、国会の停滞が続く。

 歴史的な政権交代から1年2カ月だが、民主党政権の漂流が止まらない。政権交代は旧政権を「壊す(または倒す)」、新政権を「生み出す」、新しい政治を「つくる」の3つのステップが必要だが、主役を演じたトロイカ3人は、まず「壊し屋」の小沢氏が「自民党政権を倒して更地にしなければ」と唱え、「壊す」で強力なパワーを発揮した。

 政権交代がかかった総選挙を党首として戦い、民主党政権の初代首相となった鳩山氏は「生み出す」で切り札的な役割を担った。だが、首相不適任を満天下にさらして早期退場となった。小沢氏も9月の代表選に出馬したものの、「首相無資格」の判定を受けた。残るは菅首相だけである。

 私は10月に『熱い夜明け-でもくらしい事始め』(講談社刊)という新刊を上梓した。幕末から明治前半期、中江兆民や福沢諭吉らを中心に、日本の議会制度の誕生物語を描いた。明治新国家の成立の際も「壊す」「生み出す」「つくる」を担ったリーダーたちがいた。

 西郷隆盛、木戸孝允、坂本龍馬らが幕藩体制を壊し、新国家を生み出したが、維新後、新政府を「つくる」という段階の主役は大久保利通と次の伊藤博文であった。どうやら「壊す」「生み出す」と「つくる」は、別の資質、手腕、識見、理念、手法を備えたリーダーに託さなければ歴史的な大変革は成功しないというのが「歴史の教訓」のようだ。

 自民党政権の「倒幕」を主導したトロイカ3人の最後の1人である菅首相は、「壊す」だけでなく、「つくる」を担う資質、手腕、識見、理念、手法の持ち合わせがあるのかどうか。野党時代の攻撃力と突破力は折り紙付きだったが、いまのところ、「つくる」の主役を担うリーダーとして半人前という印象である。

 これから大化けして「民主党政権の大久保」に変身を遂げるのか、それともトロイカ以外から新しい伊藤型リーダーの登場を必要とするのか、民主党は2011年、その岐路に立たされるに違いない。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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