「祖父母頼みの子育て」を礼賛できないワケ

現代日本で、どうやって子どもを育てるか?

このことについて、ただでさえ親族の経済状況によって機会の不平等が生じるというのに自助努力で成功してもまだ足を引っ張られるのか? そうした疑問が出てきても筋違いとは責められないだろう。育ててもらったのだから感謝しろというのは、恵まれた環境を与えられた者の理屈ではあっても、逆境で刻苦勉励した者の理屈ではありえない。それゆえ、平等を志向する「社会民主主義」モデルでは血縁に基づく扶養の実行を抑制してきたのだった。

にもかかわらず、自民党なんか勇敢にも憲法草案に「家族助け合い義務」を盛り込んでいる。おじいさん政治家たちが「血縁家族」モデルへの憧憬を爆発させた結果なのだろうけれど、でも、そうしたモデルがほかの世代からもある程度の支持を得ているのには、それなりの現代的社会背景もあるはずだ。

働くお母さんたちの中の不平等

まず想起される要因は高齢化で、高齢で健康な血縁者がいる可能性が高まったことだろう。加えて、戦後都会に移住した若い世代が今では都市部で祖父母世代になって、居住地が近接する親世代の子育てに参画するケースが増えたって事情もあるかもしれない。ぼくの周囲にも、地域に頼れない代わりに、近くに住む親に頼ったり、元気な親を地元から呼び寄せたりして、自身は外で働くというお母さんが結構いる。

けれど、これは「血縁家族」モデルを支持する理由にはならない。血縁者による育児補助の強調は、結局、血縁者の状況によって平等が損なわれるという「血縁家族」モデルの陥穽を再生産しているにすぎないからだ。子育てを手伝ってくれる血縁者がいなかったり、血縁者が問題を抱えていたりして、親の片方が仕事を辞めざるをえなくなれば、共働き親の家族との間に経済的・教育的格差が生じることになる。それが「血縁家族」モデルの行く末なのだ。

モラルを高唱するのは結構だけれど、そのモラルを環境の異なる他人に強制してはならないし、同じ理由で、モラルを政策に反映させようとすることには抑制的じゃなければならないのだろう。今あの狂騒を思い出すたびそう思う。 

 

(週刊東洋経済2014/11/8号)

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