21世紀の国際政治を形作るパワーは何か--ハーバード大学教授 ジョセフ・S・ナイ

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国際政治の仕事の多くは、正式なネットワークと非公式なネットワークに依存している。G20のようなネットワーク組織は課題を設定し、合意を形成し、協調政策を立案し、情報を交換し、規範を設定するために利用されている。米国務省のアン・マーリー・スローター政策企画局長は、「ネットワークによる結び付きから生まれるパワーは、結果を押し付けるパワーではない。ネットワークは組織化されたり、管理されたりすることはない。複数のプレーヤーが各自の合計よりも大きな全体に統合される」と語っている。

言い換えると、ネットワークは他のプレーヤーを支配するのではなく、共同して好ましい結果を達成するパワーを与えるのである。

世界的な情報化時代の特徴である、国家を超える課題に対処するために、国際社会は国連の枠組みを支援する補完的なネットワークを築き上げなければならない。しかし、主要国が分裂してしまうと、G20のようなネットワーク組織においても、国連やブレトンウッズ通貨体制のような行動指針となる政策課題を設定することはできないだろう。

08年の金融危機の直後、G20は各国が政策を調整する場として、保護主義の蔓延を阻止した。11月にソウルで開催されるG20の会議でどんな成果を示せるか。世界中が気をもみながら見守っている。

(週刊東洋経済2010年11月6日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

photo:www.kremlin.ru


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