「紅三代」の憧れは、ジャック・マー

80年代生まれの革命エリートが漏らす本音

日本にとって近くて遠い国、中国――。日本人は、中国や中国人について語るとき、つい画一的なイメージを持ってしまう。しかし、中国人は極めて多様だ。 とくに若い世代と古い世代には、価値観に大きな隔たりがある。では、中国人の新世代エリートたちは、何を考え、どんな価値観をもっているのか。現地でのイ ンタビューや鼎談などを通じて、キャリアから政治から恋愛まで今時の中国人の本音を探る。
(写真:真田エイチ/Imasia)

中国に「紅三代」と呼ばれる若者たちがいる。彼らは新中国の建国前、共産革命に加わり、日中戦争や国共内戦を戦った共産党幹部の孫たちだ。習近平国家主席は「紅二代」、その子ども世代ということになる。

今の中国社会では最高ランクの特権階級に属する「貴族」だが、そんな「紅三代」とひょんなことから話をする機会があった。仮に劉さんと呼ぶ。将軍一家の一人息子で20代後半。背が高く、落ち着いた雰囲気の劉さんは、物腰も柔らかで上品だ。大学と大学院で経済学を学んだ。卒業後は人民解放軍に入るも、数年後に独立し、現在は投資会社を起業したところだという。

塩野七生著『ローマ人の物語』の中国語版を全巻読破し、歴史に興味があるという彼は、こんなことを話し出した。

改革を心から望んでいる

僕は法治と民主は非常に重要だと思う。それは人の基本的権利を保護する。人類の歴史はそうした流れの中で発展してきた。ではなぜ中国が西洋と異なる道を歩んできたか、僕はずっと考えてきた。

西洋では法制に対する要求、人権に対する追求は2000年前に始まった。中国がその西洋と同じ制度を取り入れなくてはいけないとはいえないし、それは現実的なことではない。改革を急げば、社会の動揺や衝突を生じることになるかもしれない。ただそれでも僕は、改革を心から望んでいる。

僕は1980年代の後半に生まれた。同世代の友人や仲間はみな高い教育を受けていて、海外を経験した人も多い。たとえば、僕と同じ投資の仕事をしている仲間は海外との取引も多い。そうした彼らもまた、民主と法治という普遍的価値を認め、改革を望んでいる。

もちろん一部にそうでない人もいる。体制内のプロパガンダの影響を強く受け、民族意識と自尊心が強い人たちだ。それは狭隘な考えだと僕は思う。そういう人は家庭的背景があまり恵まれていない人が多い気がする。

――劉さんはかなりよい家柄のご出身ですね。

確かに、よいほうに属するだろう。でもこの国の政治体制をある面からみると、今日の受益者は明日の被害者になる。

文化大革命では多くの高級幹部が攻撃を受けた。この国の制度がある人物を保護するのは、その人が権力者であるからだ。それは逆に、権力者がその座を退けば、別の人から攻撃を受けるかもしれないということを意味する。なぜならこの国には法律による制約がないからだ。

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