羽田が国際空港になりきれていない理由 ビジネスユースの使い勝手は不十分

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国際線ターミナルの出国審査後エリアにあるフードコートは人気店を集める(撮影:梅谷 秀司)

ところが、羽田空港においては、北米から東南アジアを結ぶ便において、一部羽田での乗り継ぎ需要があるものの、基本的には同日乗り継ぎがほとんどで、翌日にまたがる国際線同士の乗り継ぎはかなり限られている。シンガポールのチャンギ国際空港や台北の桃園国際空港などで、国際線同士の乗り継ぎ時に入国せずに泊まれる便利なホテルとしてトランジットホテルが定着しているのとは対照的だ。

羽田では現在、日米路線の発着が深夜早朝帯に限られている。昼間帯の発着枠は確保されているが、日米政府間の調整が難航しているため、羽田から昼間帯に米国便が飛ぶまでには時間がかかりそうだ(関連記事「羽田から昼間帯の米国便が飛ばない事情」)。よって、羽田のトランジットホテルは将来的に必要な施設になると見込まれるものの、現在は宝の持ち腐れになっている感が否めない。

モバイル機器の充電環境は世界でもピカイチ

逆に羽田が国際空港として評価できる点も少なくない。たとえば、モバイル機器の充電環境。今や携帯電話をはじめとするモバイル機器を誰もが持ち歩く時代。羽田は空港内の至る所でコンセントが使えるようになっており、モバイル機器の充電に困らないのだ。これは世界的に見ても非常に優れており、特に外国人観光客の評価が高い。

また、今春、出国審査後エリアにオープンしたばかりの「TOKYO SKY KITCHEN」は、「六厘舎」や「叙々苑」をはじめとする人気店を集めたフードコートのクオリティが高い。

都心に近く、24時間空港という利点を最大限活かすことができる日本の玄関口である羽田空港が、世界中を飛び回る日本人のみならず外国人も含めたビジネスパーソンに愛される空港になることの意義は大きい。「スピーディかつスマートな空港」を目指して、もう一段の改善を望みたい。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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