財政再建のアジア模範国家を目指せ、GHQ主導の戦後財政危機克服策に学ぶ

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 また、金融機関の戦時補償関連融資も約835億円(1946年時点)で、当時の全国銀行貸付残高(約1061億円)の79%に及んだ。

戦時補償債務の支払いが行われなければ、企業や金融機関に巨額の損失が見込まれることとなることから、政府は当初戦時補償債務を支払う方針であったが、GHQの強力な指示を受け、戦時補償を打ち切ることを決定した。

戦時補償、つまり戦争中の政府の借金の棒引きは、当然のことながら「法律」で行われた。現代ならば財産権の大きな侵害となる法律であり、俎上に乗せることすらもありえない話である。

GHQのあまりに強い指示があったがゆえにできた法律だと考えられる。参考までに、以下にどのような法律が策定されたかを紹介したい。

「会社経理応急措置法」および「金融機関経理応急措置法」による資産の凍結

これらは、第2次大戦において生じた戦時補償債務の打ち切りに伴い、巨額の損失が発生する企業や金融機関の経営再建を行うために、新旧勘定の分離、旧勘定の整理方法等を定めるものである。

戦時補償打ち切り方針の決定と当面の応急措置の経緯を見ると、

1.まず、1946年8月8日に戦時補償全面打切りと、その影響で企業や金融機関の経営に支障が生じることを避けるための措置の大綱を閣議決定した。

2.次に、金融緊急措置令施行規則の改正が8月11日に施行され、戦時補償打ち切り関連法案実施に伴う過渡的な金融不安に対処するための措置。封鎖預金等を「第一封鎖預金等」(少額預金部分で、一定の支払いを認める)と「第二封鎖預金等」(原則として支払いを禁止)に分割する、ことが実施された。

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