棚橋選手は「冬の時代」をどう乗り越えたのか 新日本プロレス・棚橋選手に直撃!(後編)

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「今の子はプロレス自体を見ていないので、プロレスごっこができないんですよ」

棚橋:たとえばサッカーだったら本田、香川がいて、海外に出て、注目を浴びている。野球だったらメジャーリーガーになる、というように子どもは一部のスターにあこがれてプロを目指す。だから僕ももっとプロレスラーとして頑張りつつ、プロレスラーになればこんなふうにテレビに出たりして人気者になれるというところまで見せられたら、もっとプロレスラーになりたいという子が増えてくるはず。なりたい人間が増えれば増えるほど、その業界は盛り上がっていくと思うので、僕はプロレスラーは夢のある商売だということを体現し続けます。

塩野:言い切りましたね。確かに、私たちの世代は子どもの頃、プロレスごっこしてましたもんね。

プロレスは道徳教育にもいい

棚橋:そうなんです。今の子はプロレス自体を見ていないので、「ごっこ」ができない。でもプロレスも本当にプレゼンの仕方一つなんですよ。たとえば攻撃側を評価するばかりでなく、技を受けるとか、やられてもやられても立ち上がるというところにフォーカスしてみる。そうすれば親御さんもお子さんたちに、「あの選手見てみな、今やられてるけど、次は逆転して勝つかもしれないよ」と言えるから、道徳的に少しいいんじゃないかな。

塩野:でもそれはあると思いますよ。今、世の中は複雑でよくわからない。「苦しくてもやり続ければ、最後は正義が勝つ」みたいなシンプルな話も子どもに見せてほしいですね。

棚橋:そうですね。この草食男子がもてはやされる現代において、プロレスは男臭さを見せられるし、泥臭さもある。義理人情や浪花節もあるんですよ。

「プロレスを見ていると、素直に俺も頑張ろうと思える」

塩野:そうですよね。プロレスを見ていると、素直に俺も頑張ろうと思う。それって言われた話とか読んだ話とかじゃなくて、肉体が目の前で動いてるから、同じ生き物としてダイレクトに伝わるんでしょうね。

棚橋:プロレスはほかの競技と違って、選手との距離がすごく近いでしょう。応援する、届く、選手がそれに応えて頑張る。さらに盛り上がる、という客席とリングのエネルギーの循環があるんですね。僕たちもエネルギーをあげてるつもりが実はもらってたりする。そういう目に見えないエネルギーの循環が起きてます。

塩野:エネルギーの循環。だとしたら僕らもやはりエネルギーのある言葉を使わないといけないですね。

棚橋:だから子どもたちに「ウザい」とか、「面倒くさい」とか、悪い言葉を極力使わないようにしてほしいですね。

塩野:言葉には言霊(ことだま)がありますからね。

棚橋:「ウザい」って誰が言いだしたんですかね。「使えねえ」とか。あんな、人をモノにたとえて言うような言い方は、僕は本当に許せないですね。

塩野:棚橋選手から「ウザい禁止令」を出した方がいいですよ。

棚橋:僕にもうちょっと社会的影響力があったら、ウザいと言ったやつには、技をくらわしに行きたい。人の気分を害するような言葉を使っちゃダメですよ。……という僕らが、試合で「てめえぶっ殺してやる」と言ってるんですが(笑)。

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