逆境続く武田薬品、ウェバー新社長の苦悩 アステラスに抜かれた武田、新薬の将来性に疑問符

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今2014年度の営業益予想は、前期の1392億円に対し1500億円の予想(IFRS基準)と、増益を見込む。しかし、遊休不動産の売却益(上期約250億円)を含むため、本業ベースでは減益の見込みだ。

 復活の切り札になると武田が期待を寄せるのは、潰瘍性大腸炎とクローン病の治療薬「エンティビオ」だ。今年6月の発売から9月末まで、12カ国で63億円を販売した。

「年間売上高は20億ドル(約2300億円)に達する可能性がある」とウェバー社長も鼻息が荒い。来年3月には、エンティビオについての投資家向けイベントを米ニューヨークで開催するほど、気合の入れようだ。

アステラスも4年後は主力製品が特許切れ

ただし、当面は中等度から重度の患者に対象が限られ、別の標準薬での治療後の使用に限るという条件がある。そのため、クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは、2018年度の売上高を370億円と推計(上表)。武田のもくろみどおりに大型薬に育つかは未知数だ。

順風満帆なアステラスも、安閑とはしていられない。4年間の猶予があるとはいえ、2018年には、現在の主力製品である過活動膀胱治療薬「ベシケア」、非小細胞肺がん治療薬「タルセバ」の米国での特許切れが迫る。バークレイズ証券の関篤史アナリストは、これにより「営業利益が1000億円は吹き飛ぶ。だが、イクスタンジに次ぐ、いい新薬候補があまりないのが懸念」と指摘する。

絶え間なく特許切れの波が押し寄せるのは製薬業界の宿命だ。武田とアステラスの競り合いの行方は、大型新薬のコンスタントな創出力にかかっている。

(撮影:尾形文繁)

(「週刊東洋経済」2014年11月15日号<11月10日発売>掲載の「核心レポート03」を転載)

 

長谷川 愛 東洋経済 記者
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