日本の自動車メーカーの収益は回復途上《ムーディーズの業界分析》

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コーポレート・ファイナンス・グループ
VP-シニア・アナリスト 臼井 規

日本の自動車メーカーの収益は、主に以下の2つの理由によって回復しつつある。この展開は、おおむねムーディーズの予想に沿ったものである。

第1に、ムーディーズでは世界の自動車販売台数の回復を予想している。2011年の販売台数の増加率は、米国、中国の成長に牽引されて7%になると予測している。第2に、日本の自動車メーカーがここ2年間取り組んできた、大幅なコスト削減が功を奏していることが挙げられる。

日本の自動車メーカー3社の格付け(トヨタ自動車:Aa2/ネガティブ、ホンダ:A1/安定的、日産自動車:Baa2/安定的)は、世界的な景気後退後の緩やかな収益回復を織り込んでいる。ムーディーズはベースシナリオにおいて、10年、11年とも日本メーカーの営業利益率が継続して上昇するとみている。

しかし、日本の自動車メーカーが収益性を持続的に回復させ、格付けを危機前の水準に回復させるためには、世界経済のグローバル化の加速に起因する成長市場の変動性や、新興市場への需要シフトなど、いくつかの克服すべき課題が残っている。また、動きの激しい世界市場で、円高圧力を受けながらも競争力を維持していく必要がある。

本稿は、日本の大手自動車メーカー3社の信用力に影響を与える3つの主要格付け要因、すなわち、(1)収益回復の見通し、(2)米国市場と中国市場におけるパフォーマンス、(3)為替リスク、について検討する。

収益回復の見通し

08年後半から09年半ばの金融危機下で、日本の大手自動車メーカー3社は世界的な自動車需要の減少に直面した。直近の世界需要の落ち込みが大きかったため、10年3月期と11年3月期における日本の自動車メーカーの売上高と利益の回復は、緩やかなものとなるだろう。

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