メルコ・クラウン、「横浜か大阪にカジノを」 カジノは再開発のエンジンになる

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――ラスベガスのような激戦区はROI(投資収益率)が低くなる。進出しない方がいいのでは?

正しい顧客に正しいサービスを提供すれば、そのようにはならないでしょう。ラスベガスでも、ターゲットを絞らずにとにかく巨大な施設でなんでも提供するようなオペレーターのROIは厳しい。しかしベラージオ、ウィンなどは対象顧客を絞り込むことにより、高いROIを維持しています。

クラウンも効率を重視します。マカオのコタイ地区ではMCEのホテルの部屋数はサンズの3分の1くらいしかありませんが、収益は彼らの70%ほどあります。ターゲットを絞っているからこそ、高い収益性を維持できるのです。

ギャンブル依存症を治療するクリニックを併設

――日本ではカジノ進出に反対意見も多いが、とくにギャンブル依存症への懸念の声は大きい。クラウンではどのような対策を打っていますか。

メルボルンのカジノ施設には、クリニック施設が併設されている。人目を気にしないで済むよう、目立たない場所にある

まず一般的にカジノは、自宅から離れた場所にあるので、毎日のように来られる場所ではない。パブに併設されたポーキー、これは日本のパチンコのようなものですが、オーストラリアでも自宅から5~10分のところにあるものです。近所にあるので1カ月に2~3回遊んでいる人が多いですし、中には依存症の人もいます。

それと比べるとカジノはどこにでもあるわけではない。それだけでも十分、抑止力になりますし、シンガポールでは入場料を取ることで、依存症への歯止めを掛けようとしています。

しかし、完璧に依存症を予防することなどできません。オンラインカジノというものもありますから、入場料を設けたところで、ルーレットをやりたい人はやれるのです。

重要なことは、入り口で規制することではありません。ギャンブル依存症はアルコール依存症と同じで、ある種の病気です。アルコールを飲みたい人はどんなことをしてでもアルコールを探し出してアルコールを飲みますし、ギャンブル依存症の人も何がなんでもギャンブルをやろうとする。メルボルンでは過去12カ月以内にカジノをやった人が73%おり、そのうちの0.7%が頻繁に来る人です。さらに、そのうち2.36%が依存症として中級以上の問題を抱える人たちでした。

問題のある人々は特定できるので、クリニックを開設し、こうした依存症の患者を治療する効果的なプログラムを実施することに予算を掛けるようにしています。利回りのいい業界なので一定の予算を決めておき、カウンセリングサービスをプログラムとして常設することができるのです。

クリニックは、カジノゲーミングの依存症患者だけのためのものではありません。競馬やパチンコなど他の業界の助けにもなります。

――オーストラリアは人口2000万ほど。クラウンは、メルボルン、パース、ブリスベン、シドニーなど複数の施設を運営している。とくにシドニーには大規模な施設を計画しているが、メルボルンと食い合う心配は?

シドニーはジェームズ・パッカーの故郷なので、彼はそこに象徴的なものをつくろうとしています。クラウンは雇われ社長の会社ではなくオーナーシップの会社です。オーナーがパッションをもってやろうとしているわけです。

ただ、シドニーにはメルボルンにはない街としての魅力があります。私は、素晴らしい街、自慢したいものがある街には、こうしたラグジュアリーなリゾートをつくるべきだと思います。それによって、その街の魅力がよりいっそう高まることになるからです。地元の自治体にパッションがある限り、クラウンとしてもパッションをもって進めていきます。

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