楽天が出版取次「大阪屋」に出資する事情 "打倒アマゾン"でしたたかに築く包囲網

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ほかにも書店に利点はある。一例はネット連動の購入システム。消費者は店頭で欲しい本を見つけ、持ち帰るのが面倒な場合、端末のネット書店から本を買うこともある。本来ならば書店抜きの“ショールーミング”。それを、書店に入った客の購買動向を来店検知アプリなどとの連携で把握し、売れれば書店にも一定の売上高が分配されるよう、レベニューシェアを取り入れる。楽天にとっても、書店は楽天マートの雑貨など本以外の商材も扱えるし、コンビニのように商品受け取りの拠点にもなる。

出版科学研究所によると、2013年の書籍・雑誌の販売金額は9年連続減。大手出版首脳は「対アマゾンで楽天と利害が一致した」と語る。アマゾンは度重なるキャンペーンで販売奨励金を求めるなど、出版社にシビアな条件を突き付ける。「打倒アマゾン」に執念を燃やす楽天は、アマゾン一強に危機感を持つ出版社側とも、思惑が重なった。

今や楽天ブックスに加え、銀行、トラベル、スマホなど、“楽天経済圏”を次々と広げる楽天。一取次の救済でも勝負への貪欲さがうかがえる。

(撮影:梅谷秀司)

「週刊東洋経済」2014年11月8日号<11月4日発売>掲載の「核心リポート05」を掲載)

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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