調剤薬局、24時間体制が時代の要請に 薬剤師が直面する地域包括医療への対応

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24時間365日薬剤師が常駐しているクオールの港北店

「閉店中の薬局に深夜ときおり人が訪れて袋を持ち帰る」―こんな”都市伝説”のような光景が横浜市の新興ベットタウンで10年来続けられている。場所は、横浜市北東部に位置する都筑区のセンター南駅前にある大手調剤チェーン、クオールの港北店。この店舗は、01年4月の営業開始以降、24時間365日薬剤師が常駐している全国でも珍しい院外処方の調剤薬局だ。

実は、クオール港北店は、「24時間年中無休を宣伝してはいない」(同社の佐々木智哉ブロック長)。行政上の届け出は、月曜日から土曜日の午前9時から午後5時30分までが開局時間だ。よって、“営業時間外”の投薬は特定の2つの医療機関の救急患者を主な対象となっており、一般の周辺住民にほとんど利用されていないのが現状だ。

この特定医療機関の1つは、港北店の目の前にそびえたつ総合病院の昭和大学横浜市北部病院(ベット数689床)だ。01年に開院して以来、専門外来の患者がこの港北店を利用している。営業時間外は防犯上、インターホンで受付をし、木製引き戸のわずかな隙間から処方薬を渡して、代金を決済する。佐々木ブロック長によると、「慢性疾患の患者など1日平均10人は来店する」という。

夜間の料金が加算される

気になる追加料金だが、午後7時(土曜は午後1時)から翌朝午前8時までの長時間営業に対する「夜間・休日等加算」(40点=1点は10円)という調剤料が1回ごとに加算される。

調剤薬局の収益は、2年に1度の国が定めた薬剤料に加えて、調剤報酬で成り立っている。調剤報酬は、調剤技術料と薬学管理料の2つに大別できる。薬剤料は仕入れ値との差益が目減りしており、これだけで店舗経営は成り立たない。そこで、全国5万軒を超える調剤店舗は、回数を掛けた分の調剤報酬で収益を支えてようと、厚生労働省が2年に1度改定する調剤報酬明細表で定めたサービス点数を、より多く獲得することに心血を注いできた。

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