稼げないソニー! テレビ新製品を連発し、出荷台数急増でも…[上]

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 液晶パネルの価格は年間におよそ2割のペースで価格低下が進んでおり、倉庫に保管して来年に使い回すわけにはいかない。いわば生鮮食品のようなものだ。販売計画の下方修正に合わせてパネルメーカーに調達のキャンセルを申し入れなければ、そのまま来期以降の損失につながってしまうリスクがある。

ところが、キャンセルすればすべてが丸く収まるわけではない。キャンセルが、ドミノ式に将来にも難題をもたらす。緊急会議で話し合われたのは、「今期急遽調達のキャンセルを申し入れるにもかかわらず、来期にまた調達を拡大することをパネルメーカーは理解してくれるのか。特にサムスンは納得してくれるだろうか」という点だった。

ソニーは来12年3月期には、販売台数4000万台を狙う。サムスンと折半出資する合弁工場S−LCDから調達するパネルが全体の過半を占めており、工場運営の主導権を握っているのはサムスン。ソニーの販売計画は実現性がない、とサムスン側が判断すれば計画どおりにパネルを調達することは難しい。実際、サムスンは今回の一部キャンセルの申し入れを受けて、「来期4000万台の計画は、本当に達成できるのだろうか」と強い懸念を示しているという。

手はすべて打ったが主導権は取り戻せない

テレビの復活なくしてエレキ(エレクトロニクス事業)の復活なし。エレキの復活なくしてソニーの復活なし--。05年6月にハワード・ストリンガー氏が会長兼CEOに就任して以来、テレビ事業の収益化は「プレイステーション3」などゲーム事業の赤字脱却と並んで、最優先の経営課題に据えてきた。

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