JFEスチールで浮上、偽装請負疑惑の全容

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 JFEの製鉄所内では、多くの下請け企業社員が24時間体制で働いてきた。が、2008年9月のリーマンショックによって生産量が激減し、雇用の見直しを余儀なくされた。ただ今回の雇い止めの手法は乱暴ともいえ、社員にクビを宣告した共和物産のみならず、JFEの責任も問われることとなった。

共和物産は老舗の下請け企業で、製鉄所内に事業所を置き、鋼材の加工や梱包、運搬などの仕事を請け負ってきた。同社の事業所長はJFEからの出向者が務めており、渡邉さんら契約社員は、出向で来た所長からクビを言い渡された。

突然の雇い止めは、多くの問題をはらんでいる。共和物産の就業規則では、契約満了日の30日以上前の予告が必要だが、今回このルールが守られていなかった。また、4人の原告は契約社員だったとはいえ、8~17年という長期にわたって仕事に従事。それだけに雇い止めを回避する努力義務があったと思われる。

雇い止めが不可避だったのかも疑問だ。裁判所に提出された09年9月期営業利益は前年比1割程度の減益。自己資本比率は4割台だった。

一方、JFEについて原告側は、「10年近くも偽装請負で働かせてきた」(渡邉さん)点も問題視する。裁判所の文書提出命令によって出されたJFEの「作業基準書」では、原告のうち二人が従事していた塗料調合に関する業務について、作業の手順が事細かく記されていた。共和物産は直接業務にタッチしておらず、「塗料の調合や運搬では手順書に基づきJFE社員から無線で直接指示を受けていた。食事に入るタイミングも社員の指示で決められていた」(渡邉さん)。

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