海運大型発注相次ぐが、円高では収益寄与は限定的

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中国経済の好調や世界的な景気回復の兆しもあって、日本郵船など大手海運3社の1兆円に及ぶ大型投資が造船業界で話題になっている。
 今回の海運会社の輸送力増強は中国向けの鉄鉱石などが中心ということで、大型コンテナ船やケープサイズと言われる大型のバルカー(バラ積み船)が中心。日本郵船の場合、完工済みのも含めて15隻の大型コンテナ船を発注しているが、今後建造される8隻の発注先は4隻が石川島播磨重工の子会社であるIHIマリンユナイテッド。残りが韓国の現代重工になっている。IHIマリンユナイテッドが全隻受注した理由は価格や建造能力が背景になっている。今回、日本郵船が発注した大型コンテナ船はコンテナ8100個積みで、現在、IHIマリンユナイテッドがその建造能力を持っている。また、商船三井の場合はケープサイズのバルカー30隻を建造するが、発注先はユニバーサル造船ほか未上場の造船会社や韓国などになる。さらに、川崎汽船も大型コンテナ船4隻を建造するが、これも発注先はIHIマリンユナイテッドになっている。こうした大型コンテナ船以外にバルカーがほかの造船会社に発注される見込みだ。
 造船業界にとって、今回の大型発注はメリット・デメリット相半ばする感じだ。というのも、業界では数年前から受注拡大が続いており、現状でも3年分程度の受注を抱えている状況だ。ただ、今回は海運市況の高騰から船価が回復傾向にあることはプラス。問題は相変わらず円高だ。船舶はドル建てで発注される一方、調達は円建て中心のため、「120円を越える円高は業績面ではマイナス。これから数年に渡って円安傾向がはっきりするなら、今回の発注は文句無く収益回復に寄与する」と指摘している。
【日暮良一記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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