事後レポ

人口6億人の巨大市場を取り込め!
動き出すASEAN経済統合と
日本企業の針路

ASEAN地域は、構成する国々が結束し、協調と調和を保ちながら世界に占める地位を着実に向上させてきた。1960、70年代から続くASEANとの関係性の強さに期待が集まる。2015年の経済統合を控え、人口6億人の巨大市場、競争力を持つ生産基地としてのASEAN地域は一層の経済成長が見込まれている。東京・千代田区で9月25日に開催された「ASEAN CONFERENCE 2014」の会場には、同地域のビジネスチャンスに高い関心を寄せる約700人が出席。企業の進出事例や専門家の話に聞き入った。
【共催】 東洋経済新報社
【後援】 外務省、日本アセアンセンター、経済産業省
【協賛】 KPMG/あずさ監査法人、マーシュブローカージャパン、日立システムズ、
             GCAサヴィアン、S&P Capital IQ、インテージ、インフォテリア、宝印刷
ASEAN 経済統合は、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスとなる

オープニングスピーチ

外務省
経済局審議官
佐藤 達夫 氏

外務省の佐藤達夫氏は、「ASEANは政治、経済の両面で日本にとって重要な存在」と述べ、平和と安定(安全保障)、繁栄(経済協力)、より良い暮らしのため(環境・社会問題、防災)、心と心(人的交流)……のパートナー関係という4つの柱を軸にした外交の取り組みを説明した。

1973年以来、友好協力関係を築いてきた日本とASEANは、経済的相互依存関係を深めてきた。特にこの10年は、経済成長と中間層の増加により、世界の成長センターとしてのASEANの存在感が増大。2015年のASEAN経済共同体(AEC)発足に向けて、日本は、域内格差是正、連結性強化のための支援を進めている。佐藤氏は「日・ASEAN関係強化のために、官民一体となった取り組みが重要」と協力を呼びかけた。

特別講演
ユニ・チャーム 「共振の経営」について

ユニ・チャーム
代表取締役
社長執行役員
高原 豪久 氏

ASEAN地域の事業展開で実績を上げているユニ・チャームの高原豪久氏は、ベビー用紙おむつ市場で7割近いシェアを獲得したインドネシアの事例を中心に、グローバル展開の考え方や、グローバル人材の要件、育成方法などについて語った。

ユニ・チャームでは、ASEANをはじめ新興国での事業展開を「1→10→100」の方式で進めている。インドネシアの紙おむつ事業では、「1」の段階で、現地の暮らしを約3カ月かけて肌感覚で理解するところから開始。次の「10」の段階では、収入レベルに合わせた価格設定や、賃金の週払い制に対応した1枚入りの紙おむつパック導入など、局地的な成功事例を作った。そして「100」の段階で、路地の小さなストアまで含めた流通・小売りへの働きかけを通じて、局地的成功事例を同国全体に拡張することで圧倒的シェアを得ることに成功した。

グローバル人材の要件として、高原氏は、大局観をベースとして的を射た目標を描ける「創造力」、相手の話を傾聴し、率直に議論できる場を設定できる「コミュニケーション力」、現場の最新の一次情報に基づいて研ぎ澄ました「直感力」、組織全体で進化するために必要な論理性に基づく「実践力」、有事にも慌てず部下を鼓舞できる「胆力」、現地に迎合して簡単にあきらめたりしない「徹底力」……を列挙。そうした人材を量産する「共振の経営」では、「凡事徹底が非凡を生む。社員の潜在能力を開花させ、やる気を引き出す仕組みを通じて、全員が活躍する」とし、後述のさまざまな型を活用した組織能力の底上げを重視している。

具体策としてユニ・チャームでは、各国語に翻訳した「The unicharm way」を全社員に配布して、社の価値観や原則、指針を伝達している。また、全員が、課題設定や実行計画を自主的に立案し、なぜできたか、できなかったか、という反省を週次でくり返す「SAPS経営モデル」など、独自のOJTの取り組みを紹介。「全社員が思考・行動を主体的に進化させることが大切」と述べた。

基調講演
日系企業のASEAN戦略

KPMG
Global Japanese Practice
ASEAN 地域統括パートナー
藤井 康秀 氏

ASEANに計22年にわたって駐在し、日系企業支援に携わってきたKPMGの藤井康秀氏は、「ASEAN諸国に対する日系企業の投資は、中国を上回る規模になっており、生産拠点だけでなく、消費市場としても期待が高まっている」と語った。

1997年の通貨危機で打撃を受けたアジアは、2000年代に入り、世界の生産基地としての地位を着々と築いてきた。中国の台頭もあって、自動車は世界の生産台数の半数超、IT製品の生産は、ほぼアジア一極となっている。その中で、ASEANも急速な経済成長を遂げ、中国や日本との水平分業体制の一角を担う存在となっている。また、中国、インド、韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランド等とFTAを締結。15年のASEAN経済共同体発足で、域内の輸出入を自由化して、ヒト、モノ、カネが自由に行き交う単一市場を構築し、さらに生産拠点としての魅力を増そうとしている。

最近は、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、ラオスといったメコン地域も新たに注目されている。中国の人件費が高騰した結果、カンボジア、ミャンマー、ラオスの平均賃金は中国の3分の1程度となり、労働コスト面での競争力は高まっている。インフラが未整備で、陸路の輸送コストが高いといった課題はあるものの、藤井氏は「中国企業自体がチャイナ・プラス・ワンでメコン地域にシフトしている」と指摘する。

消費地としてのASEANは、域内の国ごとの格差があり、さらに各国内でも格差が大きい。ただ、富裕層や上位中間層は拡大しており、日本製品のマーケットシェアは非常に高くなっている。特に、日本車のシェアは、中国で16%にとどまるのに対して、ASEANでは約8割に達する。藤井氏は「日本への観光旅行がブームになるなど、ASEAN各国の日本に対する好感度が高いことも、うれしい魅力」と述べた。

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