多様化するセカンドキャリア、継続雇用、定年延長…先進企業に学ぶ人事制度

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【川崎重工業 63歳まで定年延長】

いびつな年齢構成を克服 移行時には細かい配慮も

川崎重工業では、2005年4月から、課長以上の幹部を除く一般従業員(労働組合の加入者で全社員の8割超)を対象に、定年延長に踏み切った。段階的に引き上げ、09年4月からは63歳となっている。

00年代前半、川重の年齢構成は50歳代が多く、30歳代後半から40歳代が少なかった。それ以降の10年間に、本体だけで約5000名の退職者が出る見込みだった。これを新規採用者だけで補うのは難しい。

折しも03年、会社側は成果主義に基づく人事処遇制度全般の改革案を労組に提示していた。その交渉中に労組側が希望者全員の65歳までの雇用保障を要請。そうした経緯を経て、人事処遇制度見直しとセットで、労使は定年延長まで踏み込んだ。

「継続雇用でも技能伝承は可能かもしれないが、熟練技能を持つ従業員に確実に残ってもらえるし、63歳まで雇用が確保され、安心して働けるメリットがある」と川井諭・人事本部労政部副部長は言う。

60歳以降は、職能等級上の資格は以前と変わらないが、賃金は約6割の水準に減額される。一部で不満の声も上がったが、6割という水準自体は、一般的な継続雇用に比べれば高い。水準を上げれば、高年齢雇用継続給付や年金が削られるケースも出てくる。会社側の説明で、不満の声はしだいに小さくなった。

このほか、もともと60歳の定年時点でまとまった退職金をもらう予定で生活設計していた人たちに対応するため、300万円限度に退職金を前借りできる制度も導入した。ただ、「退職金の前借りだと、通常の給与所得として課税され、(所得控除額が大きい)退職所得よりも税負担が重くなるので、利用者はほとんどいない」(川井副部長)。また、60歳で退職すると自己都合退職となってしまうが、その場合でも、以前に60歳で定年退職した人と退職金の算出条件は同じにした。こうした細かい配慮があって初めて、定年延長は機能したといえる。

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