日本の税制の課題は税収調達力と所得再分配機能の回復だ--峰崎直樹・内閣官房参与

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高額所得者からうんと取って、それを低額所得者に再分配するという発想よりも、どちらかというと、みんなで応分の負担をして、みんなでそれを再分配しましょうと。そういうときに、年金の場合には、高額所得なのに年金をもらっている人が結構いるので、そういう方々への税をきちんと負担してもらうということはありうる。

かつて、地方税も入れて、最高税率が65%あったが、そこまでいくかわからないが、(最高税率が)伸びたとしてもそこ。

そうすると何がいいかというと、高額の所得者が負担して、低額所得者が負担しないとなると、やはり(社会が)分断される。俺は税金を払って負担しているが、あいつらは何だと。社会が2つに分かれる。それよりも、できるかぎりみんなが負担して、みんなが社会保障を支えましょうよ、というほうが私は良いような気がする。

--課税最低限も引き下げる方向で検討するのでしょうか?

そうですね。最低限を下げて広くやると同時に、フラット課税でなく、4~5段階程度のブラケットがあっても構わない。今は5%と10%(の税率の納税者で)で納税者全体の82%を占めている。ちょっと低税率すぎる。ここが納税者階層的にはいちばん多いところ。そこ(納税者の82%が該当する層の税率)を上げるということは、中堅サラリーマンを直撃する。なかなかそこに税を増やしていくことは難しい。

--根気強く説得していくしかないのでしょうか?

いちばんダメなのは、デフレということで賃金が上がらないこと。2%、3%と賃金が上昇していれば、そのブラケット(5%と10%の税率が適用される納税者階層)を通り過ぎるはず。82%の納税者は、むしろ逆に増えている。

 低所得労働者が増えて、高額所得者、今でいうと1000万円前後の労働者の数が減って、それよりもずっと下がっていく。まあ、高額の人はもう少し増えていくでしょうけど、二極化しているので、その分やはり影響は大きく出る。デフレのマイナス要因だ。

--今後の人口動態を考えると見通しは厳しい。

所得税の世界はなかなか厳しいだろう。たとえば、社会保障の費用が上がれば上がるほど、それは経費に落ちる。働く人の数が減れば減るほど納税者は減っていくわけだから。所得税の世界はなかなか厳しい。

(撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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