Q.大学の医学部で、教育・研究・臨床に加えた次の柱の戦略構築を任されています。文部科学省からは「対話型イノベーション創出プログラム」ということで、大人同士、市民も巻き込んで対話をしなさいと言われるのですが、どうすればいいのか。対話の場を設けようにも、皆さん周りの評価を気にするのか、とてもやりにくさを感じています。
菅谷:これも慣れではないでしょうか。日本から初めてアメリカに来たという人たちも、2、3年もすると対話ができるようになっています。すると、周りの評価は気にしなければいい、ということも徐々に分かって来るんです。
対話型イノベーションと言っても、いきなり結論を求めるような対話は難しいですよ。ですから、まずは白黒つかない根源的なテーマを話し合ってみたり、逆に本や映画を見た感想を話し合うといった気楽な形から入ってみてはどうでしょうか。あと、暗闇の中で対話をする「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」やキャンプファイアーといった、非日常的な場面設定で価値観の転換を促してみるのもいいと思います。
Q.菅谷さんのご専門であるメディアリテラシー、家庭ではどのようにして教えていますか。
菅谷:うちにはテレビはないのですが、時間を決めてI-padで映像を見たりということはしています。その間、私は仕事できますしね(笑)。メディアはどうやって使うかが肝要で、接触時間が短いからいいとか長いとダメということではないと思うのです。子どもにとって、メディアは価値観をつくる上で重要な役割を果たしていますので、例えば親自身が映像を見ていなくても、内容について問いかけたり、感想を引き出したりしてあげることが大切です。
映像だけでなく、広告や商品パッケージでも何でもネタになりますよ。例えば、カロリーの低い食べ物にはカロリー表示があっても、カロリーの高いお菓子には表示されていないということがよくあります。そんな時「ねえ、なんでこっちはカロリーが書いてあって、こっちには書いていないんだろうね」と聞いてみたり。考える材料になります。
大崎:本当にそう思います。うちは私も含めてテレビ大好き人間の家族でして(笑)、刑事ドラマから「鶴瓶の家族に乾杯!」(NHK)まで、何でも対話の材料にしています。
――なるほど、本やメディアを媒介にして、色々な対話の可能性がありそうですね。今日はどうもありがとうございました。
(撮影:今井康一)
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きむら まき / Kimura Maki
ジャーナリスト、グローバルママネットワーク・コアメンバー、6歳男の子の母親。
環境と健康を重視したライフスタイルを指すLOHAS(ロハス)について、ジャーナリストとしては初めて日本の媒体で本格的に取り上げて以来、地球環境の持続可能性を重視したビジネスやライフスタイルを分野横断的に取材し続けている。
時事通信社記者、米コロンビア大学経営大学院客員研究員、環境ビジネス情報誌『オルタナ』副編集長、パルシステム生活協同組合連合会月刊誌『POCO21』編集長などを経て、現在は一般社団法人グリーンエデュケーションで環境教育ファシリテーターとしても活動中。目下の関心事は「(どんな環境でも生きて行ける)人育て」。
著書に 『ロハス・ワールドリポート―人と環境を大切にする生き方-』(ソトコト新書、木楽舎)、『ドイツビールおいしさの原点 −バイエルンに学ぶ地産地消 −』(学芸出版社)。編著に『社会的責任学入門〜環境危機時代に適応する7つの教養〜』(東北大学出版会)など。
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