ミラー氏、「TPP交渉から日本を外すべき」 中間選挙で民主党完敗、TPP交渉の行方

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――TPPに対するオバマ政権の関与の評価は。

私の見方では、マイケル・フロマン米通商代表部代表は閣僚の中で最強のメンバーであり、現時点でオバマ第2期政権の最良の閣僚だと思う。TPP協定を成し遂げる人物はフロマン代表をおいてほかにはいない。オバマ大統領に、協定に漕ぎつける強い意志がなければ、彼のような人物を任命しなかっただろう。

しかし、それには大統領自身がTPP問題をもっと鮮明に印象づける必要がある。今年初めに大統領はニューオリーンズで重要な演説をしたが、その時、貿易について一言も述べなかった。

オバマ大統領はTPPをもっと大衆の面前に出さなければならない。ブッシュ前大統領やクリントン元大統領がやったように議会の多数派である共和党の一部の議員にもっと訴えかけをすべきだ。

クリントン元大統領は2000年に中国と通商問題の正常化を果たしたが、それは政権8年目の最後の年だった。彼は1998年に共和党支配の下院で弾劾訴訟を受け、必ずしも議会は味方とは言えなかった。レーガン元大統領も1988年の通商法成立に際して同じような状況に直面していた。イラン・コントラ・スキャンダルをめぐって議会は両院とも民主党が支配していた。

いずれも問題を抱えていた時に大統領自身が率先して通商問題を優先課題として取り上げ、政治的論争の多い通商問題の打開に個人的な関心や決意をもって取り組み、最終合意にまで漕ぎつけた。オバマ大統領が同じようなアプローチを採用するかどうか、注視していきたい。

努力は報いられていない

――ホワイトハウスは議会の支持を密かに得ようとしているか

フロマン代表は議会に情報提供を怠らず、広範な協議を続けている。残念ながら彼のチームの努力は報いられていない。米通商代表部は協議を行うだけであり、議会で法案を通すための討論まではできない。

2014年初の議会スタート時の状況はよかった。当時、マックス・ボーカス上院議員、共和党カウンターパートのオーリン・ハッチ上院議員、下院歳入委員会のデイブ・キャンプ委員長などが大統領にTPAを与える法案に前向きだった。その法案は上院金融委員会を苦労せず通過するものと見られていた。下院でも歳入委員会を簡単に通過するはずだった。

議会は法案通過の用意ができていた。ところが、オバマ政権にはその用意ができていなかった。ボーカス上院議員は駐中国大使として北京へ行き、上院金融委員会のロブ・ワイデン新任委員長はボーカス=ハッチ路線と違い、新法案立案の議論さえせず、ただ、その話をしただけだった。TPA法案はいまだに立法化されていない。

その法案は、交渉目的を作成し、法案実現のための特別ルールを確立するために重要である。フロマン代表らは議会で多くの時間を費やしているが、その討論は協議に付されるだけなのだ。

議会で働いたことがある私の経験では、特定の議案を支持する議員記録を得ることが重要だ。議員が実際にTPA法案に投票することが決め手になる。米通商代表部と議会の協議だけでは不十分だ。

賛成投票を獲得して法案を通すプロセスは、最終的にTPP法案を通過させるのに必要な政治連合をつくることになる。われわれの経験では、TPA法案に賛成投票する議員は最終的な通商協定法案にも賛成投票する傾向がある。

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