ソフトバンク、営業益予想引き下げの深刻度 孫社長は前向きと強調

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ソフトバンクはこのところ海外投資を加速させている。その中心にいるのが9月に米国に設立した戦略子会社ソフトバンク・インターネット・アンド・メディア(SIMI)だ。

米グーグル<GOOGL.O>から最高経営責任者(CEO)として迎え入れたニケシュ・アローラ氏は米映画会社レジェンダリー・エンターテインメントへの出資を手掛けたのを皮切りに、韓国ドラマ配信のドラマフィーバーを買収やインドネシアの電子商取引(EC)大手PTトコペディアへの出資、さらにインドのEC大手スナップディールとタクシー配車プラットフォーム事業者オラへの投資を矢継ぎ早に決めるなど、すでにグループの投資戦略で欠かせない存在となっている。

孫社長はニケシュ氏について「ほとんど毎日電話でやりとりしている。非常に重要な経営のパートナーだ」と語った。

アジアへの投資が目立つことに関しては「アジアはこれから大きなインターネット革命の波が、とくにモバイルインターネットを通じてやってくる」との見方を示した上で「アジアを中心にインターネットのグループ会社をもっと増やしていくことは重要な戦略だ」と語った。

その際は「5%や10%を持つような株主ではなくて、30%や40%というような形で筆頭株主になって経営に影響を与えられるレベルの戦略的パートナーとしてやっていきたい」という。

孫社長はスナップディールについて「アリババ<BABA.N>のスタート時よりも速いペースで伸びている。スナップディールはインドにおけるアリババに相当する会社になる潜在能力を持っている」と期待感を示した。

円安はプラス効果大きい

日銀が追加の金融緩和に踏み切ったことで、足元では円安が加速している。孫社長は円安の影響について「ソフトバンクの保有資産の時価総額に占める比率の大半は海外でのアセットだ。その意味では円安は円に直した株式価値としてはよりプラス効果が大きくなる」と説明。1ドル82円当時に米スプリントを買収したことなどを引き合いに出し、「実質的な為替の含み益は数千億円規模は出ている」と語った。

こうした状況を踏まえた今後の財務戦略については「十分な資金が積みあがっており、アリババ、ヤフー<4689.T>などグループ会社の上場済みの株式もいっぱい持っている」とした上で「資金調達のフレキシビリティはいろいろな形で持っており、そこは常に余裕を持った形で行っていきたい。ソフトバンクのエクイティファイナンスはまったく考えていない」と強調した。

海外キャリア投資は無理せず

ソフトバンクは当局の反対もあって米携帯電話大手TモバイルUS<TMUS.N>の買収は中断したが、その後もメキシコの富豪カルロス・スリム氏が率いる通信大手アメリカ・モビル<AMXL.MX>の無線事業取得観測が浮上するなど、海外携帯電話会社への投資観測がくすぶっている。

孫社長は携帯電話会社への投資可能性について「あくまでもケースバイケース。無理して追いかけるわけでもないし、まったく目を閉ざすわけでもない。あくまでもその国の会社のポジション、潜在余力等をみながらよく考えて検討したい」と説明。「携帯電話会社は投資単位が大きく、それぞれの国の規制や競争状態など大きな勝負になるので、じっくりと検討し、条件が総合的に合えば買収を決断することもあるかもしれないが、決して無理はしない」との姿勢をあらためて示した。

 

(志田義寧 編集:宮崎大)

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