(第36回)相対価格の変化がアメリカを豊かにした

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 消費財の輸入についてだけは、95年から09年にかけての実質値での増加率が、名目値での増加率より大きい。これは、輸入価格が低下したことを示している(消費財でも、輸出については名目値での増加率のほうが高いので、価格が上昇したことがわかる。非耐久消費財については名目値での増加率が実質値での増加率を大きく上回っているが、これは原油価格上昇の影響と考えられる)。

サービスに関しては、輸入、輸出とも実質値での増加率が、名目値での増加率より3割ほど低い。これは、価格がかなり上昇したことを示している。

ところで、前回見たように、アメリカは財に関して輸入超過で、サービスに対して輸出超過だ。ところが、アメリカが輸入する消費財の価格は低下して、サービスの価格は上昇した。したがって、これらの関係に関するかぎり、アメリカにとって交易条件は好転したことになる(アメリカ全体としての交易条件は、食料や原油価格などにも影響される)。

簡単に言えば、アメリカは、価格が低下していく消費財を輸入して、価格が上昇していくサービスを輸出しているわけだ。だから、(原油価格上昇などの影響を別にすれば)アメリカは国際社会の中で相対的に豊かになっていくわけである。

これは、日本の場合とちょうど逆だ。日本は価格が相対的に低下していくもの(財。特にエレクトロニクス製品など)に関して輸出超過で、価格が相対的に上昇していくもの(サービス)に関して輸入超過だ。したがって、日本の交易条件は悪化し、日本は貧しくなったことになる。

なお、「その他、民間サービス」が輸出入ともこの期間に著しい増加を示していることが注目される。ここには、金融サービスや、インターネットを介するアウトソーシング(オンラインアウトソーシング)が含まれている。後者は、光回線を用いるほぼ無料で時間遅れなしの通信が地球規模で可能になったことにより、主としてインドとの間で行われるようになったものである。輸入についても価格上昇が見られるのは、インドの経済成長の影響だろう。

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