ルネサス、3度目のリストラだが明るい兆し 世界で戦える利益率目指す

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ルネサスがこの中間決算の発表にあわせて公表した第3四半期までの業績予想は、売上高が5959億円(5.8%減)、営業利益が634億円(同25.3%増)、四半期純利益が461億円(同353.2%増)となった。10月の子会社ルネサスエスピードライバ(RSP)の売却が売り上げ、利益ともに下押し要因となるものの、引き続き自動車用マイコンや産業用半導体などが好調を維持する。

なお、この業績予想には、RSPの売却にともなう特別利益約200億円とともに、今回発表した早期退職にかかわる費用約100億円も特別損失として織り込み済み。通期業績計画は公表していないものの、NECエレクトロニクスとの統合前のルネサステクノロジ時代の07年度以来、7年ぶりとなる最終黒字化も十分に視野に入る水準となっている。

目標は2016年度以降の営業利益率二ケタ

しかし、今期の最終黒字化が実現するかどうかは不透明な部分も残る。「構造改革の進展にともない、第4四半期に設備の減損などでそれなりの額の特損が追加で発生する可能性が残されている。今期の最終黒字化は目標ではない。あくまで16年度以降に二ケタの営業利益率を実現することが重要だと考えている」(柴田常務)

足元の堅調な業績にもかかわらず改革への厳しい姿勢を崩さない背景には、「グローバル競争に勝ち残る」という作田久男・会長兼CEOの強い思いがある。需要が大きく揺れ動くシリコンサイクルの中で足元での好調に浮かれている余裕はなく、需要減退期でも着実に利益を出せる体制を構築しなくてはいけない。顧客自動車メーカーからの厳しいコストダウン要求も続いている。

残された数少ない日の丸半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクス。繰り返される人員削減など大きな痛みを伴う構造改革の末に再生を果たせるのか。目指すは高機能化が進む世界の自動車用マイコンを担う優良企業だ。13年9月末の産業革新機構を中心とした1500億円の第三者割当増資から約1年。さらなるリストラも含め、まだまだ予断を許さない。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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