武田が復活託す大型新薬のポテンシャル ウェバー新社長が初めて語った成長戦略

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長谷川閑史会長は、ウェバー社長について「最高のリーダー」と絶賛

「プロジェクト・サミット」の中で人員削減を行うかについては、「効率をよくするために人員を増やすところも減らすところもある。人員のことについては、社員の不安感をあおるため、あまり伝えたくない」(ウェバー社長)と明言を避けた。

今期の通期でも増収増益を確保する見込みと一見順調だが、2010年前後に相次いだ大型主力製品群の特許切れラッシュ以降、年間数千億円を稼ぐ大型薬を生み出せていないのが武田の課題。そこへ、ウェバー社長は、持続的な売り上げ拡大のために、「消化器疾患、がん」と「新興国市場」という二つの重点領域を掲げた。

がん領域に研究開発費の40%を投入

特に説明会でウェバー社長が何枚ものプレゼンスライドを割いて力説していたのが、消化器分野における潰瘍性大腸炎とクローン病の治療薬「エンティビオ」だ。6月の発売以降、12カ国で63億円を売り上げた。「グローバルで年間売上高20億ドル(約2000億円)になる可能性がある」(ウェバー社長)と見る期待の新薬だという。来年3月にはエンティビオについての投資家向けイベントをニューヨークで行うほどの気合の入れようだ。がん領域には研究開発費の40%を投じ、多発性骨髄腫治療薬「イグザゾミブ」などの開発に注力する。

新興国では年間10%の売り上げの伸びを見込む。既存薬のほか、消化器疾患、がんの治療薬などを伸ばす計画だが、青写真の具体的な説明はなかった。新興国戦略では、スイスのナイコメッドの販路の活用もカギとなるだろう。同社は2011年に武田が新興国市場への参入を狙って約1兆円で買収した製薬会社だが、まだ買収の目立った成果を上げられていない。

発売したばかりのエンティビオのポテンシャルも未知数なら、新興国戦略もまだ見えない。当面は中等度から重度の患者が対象となることから、エンティビオの将来の売上高を「年間500億円程度」と見積もる業界アナリストもいる。長谷川閑史会長が「丁寧なコミュニケーションを通じた経営スタイルを持つ、最高のリーダーだ」と絶賛する、青い目の新社長の手腕が問われるのはこれからだ。

(撮影:尾形文繁)

長谷川 愛 東洋経済 記者
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