宿輪純一のシネマ経済学 ~映画を見れば経済が分かる


ボーン・レガシー(The Bourne Legacy)--映画のシリーズ化と尖ってくるケーブルテレビドラマ

 『ボーン・レガシー』(2012年)は、マット・デイモン主演の名作シリーズ『ボーン・アイデンティティー』(02年)、『ボーン・スプレマシー』(04年)、『ボーン・アルティメイタム』(07年)に続く「ボーンシリーズ」の第4弾。最初の3作は、暗殺者として高度な訓練を受けたCIAのスパイ、ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)が活躍するが、今回は彼が主人公ではない。(ジェイソン・ボーンはほんの少し登場するが)今回の主人公は、別の暗殺者のアーロン・クロス(ジェレミー・レナー)だ。「ボーンの遺産」という意味の題名であろうから、ジェーソン・ボーンがいなくてもよいのであろう...

バイオハザードV:リトリビューション(Resident Evil: Retribution)--ゾンビを再生させよう!

   『バイオハザード』は日本のテレビゲームが原作となったホラーアクション映画シリーズ。ゲームともある程度タイアップして、映画も5作目となった。
 原題(海外の題)が『Resident Evil(邪悪な居住者)』となっているのは、ゲーム開発時に米国に『Biohazard』というゲームがすでにあったからとか、また同名のロックバンドがあったからとも言われている。「Retribution」とは報いや報復の意味。毎度のことながら、なかなか暴力的な映像も多く、PG12となっている...

アベンジャーズ(Marvel’s The Avengers)--“新結合”で日本を救え

  アメリカンコミックのマーベルのヒーロー7人がチームを組んで、地球の危機に立ち向かうというアメリカ娯楽大作。ちなみに「Avenger」とは復讐者の意味である。
 この7人とはマーベルコミックに登場する、戦う実業家:アイアンマン、神失格の男:ソー、超人ソルジャー:キャプテン・アメリカ、魔性のスパイ:ブラック・ウィドウ、苦悩の科学者:ハルク、地上最強の射手:ホークアイ、司令官:ニック・フューリーである。
 本作は数年にわたって構想され準備されていた。『アイアンマン』(2008年)、『インクレディブル・ハルク』(08年)、『アイアンマン2』(10年)、『マイティ・ソー』(11年)、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11年)で、『アベンジャーズ』の構想が繰り返し登場していた...

ダークナイト ライジング(The Dark Knight Rises) --ユーロ危機にも表れてきた、何が良いのか、悪いのか

  「ダークナイト」は“Dark Night”ではなく、“Dark Knight(闇の騎士)”であり、バットマン(Batman)の新シリーズである。題名も原題は“Rises”であるが、語呂が合わなくて邦題は“ライジング”となったのであろうか。
 今回のダークナイトシリーズは『バットマンビギンズ』(2005年)、『ダークナイト』(08年)とつながって3部作目で完結編とされている。2作目より、題からあえて「バットマン」の名前を外している。
 この3作品の監督は、『インセプション』(10年)のイギリス人のクリストファー・ノーラン(42)である。そのせいか『インセプション』と、映像のイメージがダブる部分があり、この2本に同じように出演している俳優も多い...

BRAVE HEARTS 海猿 --非常時よりも平常時の“海”と“空”の戦略が必要

   今や人気映画シリーズとなっている『海猿』の4作目。もともとは『週刊ヤングサンデー』に連載されていたもの。NHKでテレビドラマとなり、その後はフジテレビが2004年に『海猿 ウミザル』として映画化し、その後、テレビドラマ「海猿 UMIZARU EVOLUTION」とした。その後、『LIMIT OF LOVE 海猿』『THE LAST MESSAGE 海猿』、そして本作の3本の映画が作られた。前作は3Dであったが、今回は2Dである。もちろん、CGは活用しているが。
 海上保安官が海難事件において命懸けで救助する、という感動的なパニックレキュー映画。無理やり感のある設定の中、お約束的な展開で救助され、ハッピーエンドを迎え、人気も高い...

リンカーン弁護士(The Lincoln Lawyer)--法律は映画の味方か

  米国の“ベストセラー作家”(いつか筆者もそういわれたいものである)マイクル・コナリー原作の、同名のベストセラー小説を映画化した法廷ドラマ。マイクル・コナリーのほかの小説では、秀作『ブラッド・ワーク』が2002年にクリント・イーストウッド製作・監督・主演で公開されている。
 本作品は、優秀だがいろいろあって、リンカーン(少し前の車種だが)の後部座席を事務所として活動する、バツ2のやり手弁護士ミック(マシュー・マコノヒー)の話。そんなミックの顧客は、主に麻薬の売人や娼婦たちといった下流階級。時には汚い手も使いながら、抜け目なく弁護士として何とかリンカーンと生きてきた...

アメイジング・スパイダーマン(The Amazing Spider−Man)--女性の活躍が世界を救う

   今年はスパイダーマンがマーベル・コミックに登場して、ちょうど50年に当たる。最近でも2002年からの3部作が映画化されたが、4作目を中止して、新しいシリーズとしてリメイクすることになった。
  正確に言うと、シリーズにおける連続性を捨て、新たに一から仕切り直すことになり、これをリブート(Reboot)という。監督以下、出演者も刷新、入れ替わった。題名にも「アメイジング」を冠した。
 今回の映画も、スパイダーマンの誕生から始まる。その誕生がより詳細に描かれ、本作は少し今までの作品とは違った形になっている。...

スノーホワイト(Snow White & the Huntsman)--ドイツは不況か、好況か

   『スノーホワイト』、その名からもわかるように、ベースは「白雪姫」である。ディズニーの物語と考えている方もいるようだが、これはドイツのグリム童話の1つである。最近、主としてディズニー経由が多いが、グリム童話が映画化されることが多い。筆者がざっと思い出してみても、かえるの王さま(プリンセスと魔法のキス)、ラプンツェル、灰かぶり(シンデレラ)、赤ずきん、白雪姫、青ひげなどなど。 
 白雪姫は何回も映画化されているが、このあとジュリア・ロバーツ主演で『白雪姫と鏡の王女』(Mirror Mirror)という作品が日本では...

ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris)--欧州債務危機は、先進国の共通問題

  筆者の好きな監督の1人であるウディ・アレンの映画である。彼は1935年生まれの76歳(!)、監督生活47年+第42作目というから驚きだ。アカデミー賞も『アニー・ホール』で監督賞、『アニー・ホール』『ハンナとその姉妹』と本作『ミッドナイト・イン・パリ』で脚本賞を受賞している。本作品はウディ・アレンの作品では最高の興行成績をたたき出しているのだから、老いてますます、という感じで大したものである...

ロボット (Endhiran/The ROBOT) --次なる「インド」

 もしかしたら日本ではいちばん知名度のあるインドの映画スター『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995年)のラジニカーント(久しぶり!)が、1人2役で主演したインド映画である。さらに、94年度ミスワールドに輝いたアイシュワリヤー・ラーイが、ヒロイン役で出演しているのも注目だ。
 2010年の公開であるが、独特な激しいアクションシーンが話題を呼び、インドでは国内史上最高のヒット(!)を記録、アメリカ、イギリス、韓国などで全世界累計の興行収入は100億円を突破というから驚きだ...

宇宙兄弟(Space Brothers) --もう一度考えよう“夢”の意味、“リスク”の意味

 週刊『モーニング』に2008年1月から連載中のベストセラー・コミックがもともとの原作。12年4月からテレビアニメが放送中。さらに、今回の作品は人気若手俳優・小栗旬と岡田将生を主演に迎えて実写映画化したものである。麻生久美子、堤真一、井上芳雄ら多彩な名脇役で固めているところも魅力の1つ。
  最近、日本映画界は空前の「はやぶさ」ブームであった。『はやぶさ 遥かなる帰還』(12年2月)は東映、『おかえり、はやぶさ』(12年3月)は松竹、『はやぶさ/HAYABUSA』(11年10月)が20世紀フォックス、『はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH』(11年5月)が角川、となっていた。この中に、東宝が入っていないが、宇宙関連ではこの『宇宙兄弟』が...

バトルシップ(Battleship) --日本も学ぶべき“吹っ切れた”100周年記念の戦略

 ハワイ沖での環太平洋合同演習(RIMPAC/リムパック)中に、アメリカ海軍や日本の自衛隊の「戦艦」が、謎のエイリアンの母船と空飛ぶ武器による攻撃を受け、お約束であるが地球存亡の危機に立ち向かっていくというハリウッド型SFアクションの“真骨頂”。
 アメリカ海軍の新人将校アレックス(テイラー・キッチュ)は、日本の自衛艦みょうこうの艦長ナガタ(浅野忠信)をライバル視しながら演習に参加した。そのさなか、沖合で正体不明の巨大物体が発見される。
 科学者を中心とした人類からの友好的な呼びかけに応じて現れたエイリアンと信じていたが、彼らは突如として謎の武器で攻撃を仕掛けてくる。これもお約束であるが圧倒的に強く、人類の武器は歯が立たな...

ヘルプ ~心がつなぐストーリー~(The Help) --実は弱い人々に支えられている米国

 本作品も第84回アカデミー賞の作品賞ノミネート、助演女優賞にジェシカ・チャステインとオクタヴィア・スペンサーがノミネート。一作品から助演女優賞2人のノミネートは珍しい。そのうち、黒人女優のオクタヴィア・スペンサーが受賞した。演出のせいか、登場する女性が生き生きとして、男性の影が薄い感じもするぐらいである。
 時代は1960年代前半というから(筆者は63年生まれ)、それほど昔の話ではない。“ヘルプ”とは南部で働く黒人メイドのこと。その時代、黒人であるというだけで差別され、暴力の犠牲になることもあった。本作品は、白人家庭でメイドとして働く黒人女性たちと、ジャーナリスト志望の若い白人女性の勇気と友情で、南部の古風な町に変革をもたらす感動的なヒューマンドラマである...

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(The Iron Lady)--つらい経済改革と強い心と幸せ

 今年の第84回アカデミー賞の主演女優賞とメークアップ賞受賞の作品。まずこのメークアップ賞はアカデミー賞の表彰式の早い段階で発表されたが、納得できた。何しろメークアップのおかげもあって、メリル・ストリープがそっくりなのである。サッチャー首相は筆者も学生時代にニュースで見ていた。その政治や経済政策、特に経済改革政策のサッチャリズムは、米国のレーガノミスクスと同様に勉強した記憶もある。
 メリル・ストリープは、1949年生まれの62歳(!)。アカデミー賞では俳優として史上最多となる17回ノミネートされ、そのうち、『クレイマー、クレイマー』(79年)で助演女優賞、『ソフィーの選択』(82年)と今回の『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011年)で主演女優賞を受賞した。彼女の映画出演は40本を超える。その映画に打ち込む姿勢は女性版ロバート・デニーロともいう人がいるほどである説...


ヒューゴの不思議な発明 --形を変えていく映画という産業と、形を変えない映画の“心”

  マーティン・スコセッシ監督の2011年製作の名作で、今年の第84回アカデミー賞では作品賞・監督賞などは逃したが、撮影賞、美術賞など5部門を受賞した。今年70歳を迎える大御所のスコセッシ監督の思いが詰まった作品。
 スコセッシという名前からわかるように監督はイタリア系で、彼は同じくイタリア系の俳優と組むことが多い。ロバート・デ・ニーロと組んで、『タクシードライバー』『レイジンブ・ブル』『キング・オブ・コメディ』といった名作を、そしてレオナルド・ディカプリオと組んで、『ギャング・オブ・ニューヨーク』『ディパーテッド』『シャッターアイランド』などの名作を世に出した。このうち『ディパーテッド』でアカデミー監督賞を受賞している。
 どちらかというと、彼の作品は不条理な世界のバイオレンスというか、激しいものが多かったが、今回はなんとファンタジー、しかも、流行の“3D”というから驚きだ。原作は世界各国でベストセラーとなったブライアン・セルズニックの小説...

おとなのけんか --「政治と経済」と「本音と建前」

  2006年の初演だが世界各地の公演で大好評を博している舞台劇(コメディ)の映画化である。まず気がつくのが、キャストや原作者、そして監督も超豪華ということだ。
 フランス人の女性劇作家ヤスミナ・レザの原作で、レザは、演劇界でもたいへん高い権威のあるトニー賞とオリヴィエ賞とを受賞している。ちなみに演劇界のアカデミー賞といわれる「トニー賞」は、正式名称をアントワネット・ペリー賞という。トニーとはアントワネットの愛称だ。米国の演劇とミュージカルの賞で最も権威のあるもので、女優・演出家で米演劇界の功労者、アントワネット・ペリーの呼びかけで1947年から開始された...

ドラゴン・タトゥーの女 --犯罪と経済の関係

    ミステリー好きなら知っている、世界約506カ国で5000万部以上というスーパーな売り上げを誇る、スウェーデンのスティーグ・ラーソン原作による「ミレニアム」の映画化、というよりは母国スウェーデンで映画化されたもののリメイク。「ミレニアム」シリーズの映画も3本あるが、今回はその第1部。ストーリーはほぼ一緒だ。
  雑誌「ミレニアム」のミカエル・ブルムクヴィストは、大物実業家の不正行為を暴き、名誉毀損で有罪になったという筋金入りのジャーナリスト。実は原作者のスティーグ・ラーソンもそんなジャーナリストだった。彼は小説のヒットを知らずに、筆者と同じぐらいの年で亡くなっている...

きみはペット --韓国の国家的経済戦略

   松本潤と小雪で2003年にTBSでテレビドラマとなった人気コミックが、このたび、韓国で映画化された。最近では、このような国を超えたリメークは珍しくなくなってきた。
 超優秀なアラサー女性編集者チ・ウニ(キム・ハヌル)であるが、職場では左遷され、さらにプライベートでは失恋してしまう。当然、気分がすっかり滅入ってしまう。そんなとき、突然、彼女の前に若きバレエダンサー、カン・イノ(チャン・グンソク)が思いもかけない形で現れる...


ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル --IMFよ、世界を救え!

  メガヒット・アクションシリーズ『ミッション:インポッシブル』の第4弾! もともとは米国のテレビドラマ「スパイ大作戦(Mission: Impossible)」(1966~73年)であり、筆者が小学生の頃、実際にテレビで見ていたのを覚えている。
 今回の映画シリーズはすべてが秀作だが、第1弾が96年にリリースされ、以降2000年、06年、そして11年と5年ぐらい間が空く。この『ミッション:インポッシブル』は、今や“トム・クルーズ”のシリーズといっても過言ではない。このシリーズではプロデューサーもやっている...

タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 --ヨーロッパから来た楽しいコミック

  ヨーロッパからやってくるのは経済危機だけではない。ヨーロッパで長年愛されている素敵なコミックのアニメーション映画もやってきた。前髪が立ったショートカットでカッコいい少年記者タンタン(TINTIN)と相棒の“白い”フォックステリア犬スノーウィ(SNOWY)の物語である。『タンタンの冒険』は、もともとはベルギーのコミック。日本ではアメリカのディズニーのキャラクターほど有名ではないが、世界的にはかなりの人気シリーズで、世代や...

ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド --経済が求める“幸せ”とは

 ザ・ビートルズのメンバーのジョージ・ハリスンが58歳で亡くなってすでに10年。没後10年作品として、『タクシードライバー』『ディパーテッド』のアカデミー賞受賞監督マーティン・スコセッシが手掛けた音楽ドキュメンタリー映画。スコセッシはニューヨーク出身のハード系の監督というイメージがあるだけに少し意外感があったが、切れ味よくジョージの苦悩と生き方を描いている...

マネーボール --日本にこそ求められる「経営改革」

 1963年生まれの筆者と同い年のブラッド・ピットの秀作。筆者も最近、歳を感じることが多くなってきたが、彼もこの作品でアクション系から演技派への脱皮を図っているように感じられる。本作は、今年の東京国際映画祭のクロージング作品で、早くもアカデミー賞(作品賞・主演男優賞)の予想も出始めている。筆者は個人的にそうなると思う。彼は最近、来日したが、3月の東日本大震災発生以来、久々の超大物映画俳優の本格的な来日であり、何となくうれしい(東京国際映画祭のミラ・ジョヴォヴィッチの日本滞在3時間!には驚いた)...


キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー --アメコミとスーパーヒーローと日本化

 日本ではややマイナーだが、伝説のアメコミ(アメリカンコミックス)のスーパーヒーローを実写化したアクション大作。やせた青年が、軍の秘密実験で超人兵器「キャプテン・アメリカ」となり、国の名を背負い、祖国のために身体を張って敵に立ち向かっていくさまを描く。
  第2次世界大戦中の1942年、スティーブ(クリス・エヴァンス)は、各地に進攻するドイツのヒドラ党と戦うことを望んでいた。もともと病弱な彼は入隊を何度も却下されていたが、ある日、軍が秘密裏に行う「スーパーソルジャー計画」という実験に参加することになる。その実験の被験者第1号に選ばれた彼は、強靭な肉体を持つ「キャプテン・アメリカ」へと変貌を遂げる...


ワイルド・スピード MEGA MAX --スリルとリスクと創造的破壊

 “MEGA MAX”といかにも日本らしい副題がついている。激しいカーアクションを繰り広げかつオシャレな『ワイルド・スピード』シリーズの第5作目。ちなみに原題は『FAST FIVE』とオシャレに控えめである。 
 毎度のことながら、超高級車の盗みを命懸けでこなすドミニク(ヴィン・ディーゼル)とブライアン(ポール・ウォーカー)が、そのような生活から抜け出て、本当の自由を得るために、裏社会を牛耳る黒幕から1億ドルを奪う“無謀”な最後の計画を実行する...


世界侵略:ロサンゼルス決戦 --戦争映画と財政赤字の関係

 映画の都ハリウッドに近い米国ロサンゼルスを主要な舞台として、地球侵略にきたエイリアン(宇宙人)と対決する海兵隊員の勇敢な戦いを描いた、最近はやりの「対エイリアン戦争映画」である。
 映画の一分野に「戦争映画」というものがあり、根強い人気がある。アメリカ映画史の中で戦争映画を見ていると、“対インディアン”があり、その後、第2次世界大戦の“対ナチス”、“対日本”となった。さらに冷戦下で“対ソ連”となり、最近では、何かと“対アラブ”となった時期もあった..


ハンナ --悲しい少女と不景気と暴力

   ヨーロッパ北部のフィンランドの山奥で、元CIA工作員の父親(エリック・バナ)に生まれたときから隔離され、格闘・殺人に関するテクニックを徹底的に教え込まれたハンナ(シアーシャ・ローナン)。彼女は人の痛みを知らず感情を持たず、悲しく16歳になる。
  すでに父親の戦闘能力を超えていたハンナは、ある任務のためにヨーロッパへと旅立つが、父親の同僚だったCIA捜査官のマリッサ(名女優ケイト・ブランシェット)がしつこく追ってくる。マリッサはハンナの母親の仇でもある..


一枚のハガキ --新しい道を切り開く、折れない強い心が必要

  邦画界最高齢(1912年生まれで現在99歳)の現役映画監督である新藤兼人が、自らの苦悩の戦争体験をベースに描く人間ドラマ(ちなみに世界ではポルトガルに1908年生まれのマノエル・ド・オリヴェイラ監督がおり、世界では2番目の高齢)。
 本作品は昨年の第23回東京国際映画祭審査員特別賞も受賞している。しかし、残念ながら新藤監督は本作品を最後の監督作としている...


トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン --硬直化し、残念な日本

 『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン(2011年)』は、ヒットシリーズ『トランスフォーマー』の第3弾目。『トランスフォーマー』(07年)、『トランスフォーマー/リベンジ(09年)』と順調に製作されてきた。
 ダークサイド・ムーンとは、地球からは見ることのできない月の裏側のこと。アクションものでもあり、今回から3Dとなった。この3Dは『アバター』の機材を使っているからとかで、CGと合わせすばらしい動きとなっている。...


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2--マーケティング手法の活用がヒットの秘訣

 『ハリー・ポッター』は、イギリスの女流作家J・K・ローリングによるファンタジー小説の大ベストセラー、映画化されて一段と世界的に知名度が上がった。彼女はいまや小説や映画の売り上げで、通説では約800億円を超える大金持ち。大英帝国勲章も受章している。しかし、その小説が売れる前までは、かなり苦労したようである...


ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える(The Hangover PartII)--続編の多発は成長を止める可能性あり

  結婚式前夜のバチェラー・パーティ(独身さよならパーティ)にハメを外すというアメリカ映画によくあるパターン。最悪な二日酔い(ハングオーバー)で目を覚まして焦っている男たちを描いた大ヒット・コメディ『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の“続編”である。
 もし私が監督で続編を作るときには次のような点を考えると思う。(1)舞台を移す、(2)レベルをアップする、(3)新しいキャラクターを入れる、(4)特撮や3Dにする...


ヤバい経済学 --日本にこそ必要な“ヤバい経済学”

   最近、金融や経済をテーマとした映画が多い。これもリーマンショックからの世界金融恐慌のせいであろうか。この『ヤバい経済学』もその一本と言っていい。原作は全世界でなんと400万部(!)も売れた超ベストセラー。作者は、経済学博士でシカゴ大学において教鞭をとるスティーヴン・D・レヴィットと、ジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーで、レヴィットの説明をダブナーが書籍にまとめたもの(日本語版:『ヤバい経済学(増補改訂版)』東洋経済新報社...


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら --ドラッカーは人生と政治にも効く

   ある都立の普通高校がその舞台。病床の親友に代わって、都予選では一回戦で敗退する野球部のマネージャーをすることになった女子高生のみなみ(「タッチ」の南ちゃんをすぐ連想させる名前だ--演じるのは、AKB48で1、2位の人気を争う前田敦子)。しかし、エースをはじめ、部員の大半は練習をさぼって遊び放題でどうしようもない。途方に暮れたみなみは、マネージャーの仕事について書かれた教本を探すことにする。ところが、マネージャーの本を買おうとしたところ“間違えて”『マネジメント』を買ってしまった。しかし、読んでみたらなんと面白かったという...


『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実(Inside Job)』--世界金融危機の生きた勉強

  100年に一度といわれた「リーマンショック」として記憶されている2008年からの世界金融危機。長引く世界的な不況の中、東日本大震災という自然の脅威に見舞われた日本人にとっては、この作品が訴える、米国の強欲にまみれた人々が引き起こした“人災”=金融危機が、近代の歴史の中で何度も繰り返される醜さに、憤りを感じずにはいられないはずだ。本作品はドキュメンタリーでもあり、まさにそのままで「金融」の勉強になる。“Inside Job”とは「内部の者による犯行」という意味であり、米国から発生した世界金融危機を、端的にそのように表現...


『ブラック・スワン (Black Swan)』--予想外のことが実は多い

  主役のナタリー・ポートマンは、1981年イスラエル生まれ。本作品でアカデミー主演女優賞を受賞した。94年の『レオン』のマチルダ役でデビュー。『スター・ウォーズ』シリーズのアミダラ姫を好演。その後『クローサー』や『マイ・ブルーベリー・ナイツ』等の秀作に多数出演。撮影の合間を縫ってハーバード大学を卒業。最近、本作品の撮影で知り合った、フランス人バレエダンサーで振付師のベンジャミン・ミルピエと「できちゃった婚」とい...


『ガリバー旅行記 (Gulliver’s Travels)』--経済には気持ちも大事

   日本人であれば、多分1回は絵本を読んでいる『ガリバー旅行記』の3D映画化である。『ガリバー旅行記』は、アイルランドのジョナサン・スウィフトが医師レミュエル・ガリバーの旅行記の形で書き、1726年に出版したとされている。元々はイギリスに対する風刺だったという。原作は4巻から成り、第1巻が小人の国、第2巻が巨人の国、第3巻は空中の国(ラピュータ)や日本も含めた国々、第4巻は馬の国の話であった。第1巻が子供用にリメーク...


『塔の上のラプンツェル(TANGLED)』--元気になるアメリカ映画とマーケティング

  本作品はディズニー長編アニメ第50作記念映画である。ディズニーは、それまでも外部の物語を取り入れてきた。長編アニメの中でも1作目の『白雪姫』(53=グリム童話に振られた作番)、『シンデレラ(灰かぶり)』(21)、そして49作目の『プリンセスと魔法のキス(蛙の王様)』(1)、そしてこの『塔の上のラプンツェル(ラプンツェル)』(12)ということである。 もともとグリム童話は、「赤ずきんちゃん」のようにやや残酷であったり、激しい部...


『英国王のスピーチ (The King's Speech)』--日本が参考にしていい英国

  幼い頃から、ずっと吃音(きつおん)に悩んできたジョージ6世(コリン・ファース)が強いプレッシャーやストレスの中、周囲の力を借りながらも、自ら大変な努力をして克服し、国民に愛される王になるまでを描くという実話に基づく感動的な作品。弱みや欠点を抱えた一人の男の人間ドラマと、実話ならではの深さが見どころといえる。日本ではあり得ない「開かれた王室」の話...


『ツーリスト(The Tourist)』--観光客が日本を救う

 本作品はハリウッドの2大「ドル箱スター」(今はドル安基調なのでこの言い方しませんね)のアンジェリーナ・ジョリー(35歳)とジョニー・デップ(47歳:ウサギ年の歳男)の贅沢な組み合わせ=初共演によるサスペンスである。どうでもいい話であるが、実は小生は彼と同い年である。そして映画業界では同い年で頑張って...


『ヒア アフター(Hereafter)』--天災によるインフレ進行

 クリント・イーストウッドの最新作である。彼は現在80歳(!)でますます活発な活動をしている。最近では『ダーティハリー』などといった俳優としての活動ではなく、監督としての活動のほうに力点を移している。70歳を過ぎてから、アカデミー賞受賞作『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)、『硫黄島からの手紙』(06)、『父親...


『ウォール・ストリート』--金融取引に極めて大事な2つのこと

 本作品は、はっきりとは示されていないが、破綻した「リーマン・ブラザース」がそのモチーフとなっていると考えられる。そのため内容にリアリティがある。1987年の名作『ウォール街(Wall Street)』の23年ぶりの続編であり、前作に続き社会派監督オリバー・ストーンが再びメガホンを取っている。前作でアカデミー主演男優賞を受...


『ソーシャル・ネットワーク』--経済改革には起業の活性化が必要

 会員数5億人(日本国内は約180万人)という世界最大のSNSである「facebook」誕生の裏側を描いた伝記ドラマである。筆者もMixi, Twitter に加え、facebookも利用している。最近でも、facebookは、ゴールドマン・サックスから4億5000万ドル(約370億円)を調達し注目を浴びた。企業価値は推定で500億ド...

『トロン:レガシー』--人間の恐れる人間が作ったシステム

 本作品はリメークではなく、同じコンセプトで時代を経た続編である。前作『トロン』は、筆者が高校生であった1982年の公開。その時代でも、トロン(TRON)という響きから、高校生ながらに最先端のコンピュータの雰囲気を感じた。それは、かなり衝撃的な映画だったのを覚えている。それはコンピュータグラフィックス(CG)が初めて...

『クリスマス・ストーリー』--景気回復にとって大事なホリディ・シーズン

 カトリーヌ・ドヌーブ主演のフランスのクリスマス映画。舞台は、監督の故郷であるフランス北部のベルギー国境に近いルーベの街。西洋ではクリスマスは家族が集まる大切な日となっている。ヴュイヤール家では、母ジュノン(ドヌーブ)に病気(白血病)が発見されたため、いろいろあって疎遠になっていた子供が久しぶりに帰ってくる...

『ノルウェイの森』--資源国通貨の行方

 主人公の“僕”ことワタナベ(松山ケンイチ)は、親友であるキズキが自殺し、友人のいない東京の大学(村上の母校の早稲田大学と思われる)に通う。その後、キズキの元彼女だった直子(菊地凛子)と再会する。若い2人は直子の部屋で関係を持つ。その後、直子は心を病み、京都の精神病院に入院する。そして、“僕”は大学で出会った緑...

『ルイーサ』--アルゼンチンの幸せ

 主人公のルイーサ(レオノール・マソン)は人口300万人を超える大都市ブエノスアイレスに住む孤独な中年女性。夫と娘は1975年5月の同じ日に亡くした。その二人が葬られている霊園での電話番と、スター女優の手伝いの二つの仕事を掛け持ちしながら、ブエノスアイレスのアパートで一人ひっそりと、ある意味無味乾燥に...

『エクスペンダブルズ』--中高年が日本経済を救う

 もともと才能があり『ロッキー』シリーズでも、監督、脚本、主演を務めたシルヴェスター・スタローンであるが、また三役をこなす。黒澤明の『七人の侍』をベースにして、南アメリカの“独裁政権”と闘い、たいへんなピンチに合いながらも打倒する、という伝統的アクション“超”大作。題名の「Expendable」とは消耗品のこと...

『十三人の刺客』--江戸時代末期と似ている、今の日本

 今年、特に下期の映画界は、空前の時代劇ブームである。本作品以外にも『桜田門外ノ変』『大奥』『雷桜』『武士の家計簿』『最後の忠臣蔵』『半次郎』と6本公開される。これらの時代劇には特徴が1つある。ほとんどの作品の舞台が“江戸時代末期”なのである...

『食べて、祈って、恋をして』--成長するインドに頼るのも一案

 この『食べて、祈って、恋をして』という表題は、原題を柔らかくした邦題かと思ったらそうではない、原題も『Eat Pray Love』とまさにそのままなのである。その名のとおり、片意地を張らない、いい作品である。しかも、作者の自伝的(ベストセラー)小説なのである。この3点は...

『バイオハザードIV アフターライフ』--日本経済のゾンビ化を阻止せよ

 最近、ゾンビ映画が流行している。この『バイオハザード』も名前こそ「アンデッド(Undead)」と違えども、ゾンビ映画の一つ。『バイオハザード』は、そもそもは日本のゲームが映画化されたものだ。そういったこともあって、このシリーズ4作目は東京、それも渋谷のハチ公前交差点から...

『ベスト・キッド』--世界の主要マーケットはアジアへ、精神面もテーマに

 今回ご紹介する『ベスト・キッド』(原題:The Karate Kid)は2010年製作であるが、1984年から4本作られた『ベスト・キッド』シリーズのリメイクである。今度は舞台を中国・北京に移し、黒人の少年が主人公となる。武道はカラテではなく、カンフーだ。突っ込みどころはこの作品には多数あるが、細かいところを気にしない...

『ソルト』--危機意識が経済を変える

 一言でいえば、アンジェリーナ・ジョリーの魅力が炸裂するサスペンス・アクション。今回の来日時にもお会いしたが、さらにやせてスタイルも良くなり綺麗になった気がする(随所の入れ墨は、ドレスのすき間から見えたが残っていた)。実はジョン・ボイドの娘であるが、あまり似ていないような……

『トイ・ストーリー3』--忘れがちな“無常”の概念、時間の大切さを実感して生きる

 第1作目の『トイ・ストーリー』が1995年(日本では96年)公開なので、15年前のこととなる。月日が経つのは早いものである。映画の中でも、設定は第1作目から10年後とされている。おもちゃの持ち主アンディはすでに17歳になり、大学に進学する。アンディは大学の寮に入るため引越しをするが、カウボーイ...

『孤高のメス』--今の日本経済に必要な“真摯さ”を描く

 とても良くできた映画である。特に脚本がすばらしく、流れに無理がない。多分、日本のいくつかの映画賞を受賞すると確信している。筆者はシカゴに駐在していたこともあり、シカゴがロケ地である米国の医療ドラマ『ER』のファンであるが、手術のシーンは『ER』と同様、た...

『セックス・アンド・ザ・シティ2』--女優もビジネスも“個性”こそ大事

 『セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)』は、もともとはアメリカのケーブルテレビ局HBO制作のテレビドラマ。1998年から2004年にかけて、全6シーズン放送された。日本で出版された書籍の題名が『セックスとニューヨーク』となんとも印象的な題名だったのを覚えている...

『ローラーガールズ・ダイアリー』--見えない強さの経済

 この作品は、「ローラーゲーム(Roller Game)」をテーマにした典型的なスポーツ自己実現型感動系さわやか映画である。しかし、決してウザくない。「ローラーゲーム」とは、室内に設置された競輪のような傾斜のあるトラックで、ローラースケート履いた選手が競うゲーム。得点する権利のあるスケー...

『シャッターアイランド』--英語も経済力?

 前回ご紹介の『アリス・イン・ワンダーランド』のジョニー・デップとティム・バートンといった俳優と監督の名コンビはほかにもある。今回ご紹介する『シャッターアイランド』にけるレオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシ監督のコンビもその一つ。組んだ作品は『ギャング・オブ・ニューヨ...

『アリス・イン・ワンダーランド』--映画が引っ張る経済成長

 原作の『不思議の国のアリス』は、1865年にルイス・キャロルによって描かれた世界的に有名な小説で、誰でも1度は読んだことがあるだろう。30本以上の映画、数え切れないテレビ作品となってきた。この作品の魅力は“摩訶不思議な奇妙さ”。同じ魅力を持ち、アリスを最大限に光らせることができたのが、ティム・バートン...

『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』--信頼と市場の原理

 この作品は、非常に経済的、いや市場的な映画である。本作品の元々の原作は、2005年から『週刊ヤングジャンプ』に連載されている漫画『LIAR GAME』(ライアーゲーム:うそつきのゲーム)。それをフジテレビがテレビドラマ化し、放送した。テレビドラマは、まず07年に「シーズン1」が土曜日の午後11時10分から新設された...

『ハート・ロッカー』--次の経済成長エンジンは中東か 

 『ハート・ロッカー』(The Hurt Locker)は、第82回(2010年)のアカデミー賞で、作品賞、監督賞をはじめとして、オリジナル脚本賞、編集賞、音響編集賞、音響調整賞の6部門で受賞した秀作。イラク戦争を描いた映画が不人気だったこともあり、アメリカでも当初は、日本の現状と同様に公開映画館が少なかった...

しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(5年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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